英文契約書の相談・質問集326 裁判所の開示命令を受けた情報は秘密情報の例外にすべきですか。
英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「裁判所の開示命令を受けた情報は秘密情報の例外にすべきですか。」というものがあります。
これは,秘密保持契約書(NDA)などで問題になるケースです。
秘密保持契約書(NDA)には,通常,どういう情報が秘密情報に当たるかの定義規定が置かれ,逆に,どのような情報が秘密情報にならないかの例外規定も置かれます。
例外規定には,もともと相手方が取得していた情報や公知情報などが典型例として書かれます。
これに加え,裁判所や行政機関から法令に基づいて開示を命じられた情報も秘密情報の例外に当たる,つまり,秘密情報としては扱われないとされていることがあります。
しかしながら,このような内容には問題があります。
なぜなら,裁判所などに開示を命じられた情報が秘密情報の例外に当たり秘密情報として扱われないとなると,理屈のうえでは,情報の受領者が秘密保持契約書(NDA)に書かれた目的以外の目的で当該情報を使用したり,第三者に当該情報を開示したりしても契約違反にならないということになってしまうからです。
つまり,ひとたび裁判所から開示命令を受けた情報は,それ以降秘密情報ではなくなり,受領当事者がその情報を自由に使用できるということになってしまうのです。
もちろん,これはあくまで形式的な文言解釈をすれば理論上こうなるということですので,実際に受領当事者が開示当事者の不利益になるような当該情報の使い方をした際に,本当に契約違反にならないかについては検討の余地があるでしょう。
ただ,文言上は秘密情報ではなくなるということになってしまうので,無用な紛争を生じさせないように上記のような定め方については注意したほうが良いかと思います。
具体的にどうしたら良いかというと,秘密情報の例外にするのではなく,「裁判所などから開示命令を受けた情報は,その命令に従って開示ができるだけだ」と規定するのです。
こうすれば,裁判所などの開示命令の対象になった情報も依然として秘密情報ではあり,ただ命令に従った開示をしても秘密保持契約(NDA)違反にならないということを意味するだけとなります
。
契約書を作成したり,修正したりする人が,あくまで命令に従って開示をしても契約違反にならないとしたいつもりで文言を作成したとしても,冒頭のような例外規定にしてしまうと,問題を生じる可能性があるので,注意したほうが良いかと思います。
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