エジプトの法制度|販売店契約で注意すべき4つのポイント
日本企業が販売店(Distributor)を指名してエジプトに進出する際は,以下のようなエジプトの法制度に注意したほうがよいでしょう。
エジプトの法制度 早見表
| 販売店の保護 | 代理店保護法は販売店には一般に適用がないとされるが,類推適用の可能性に注意 |
|---|---|
| 契約の登録 | 代理店契約は登録が必要(未登録の代理店には刑事罰の定めあり) |
| 言語の規制 | 販売店契約はなし(代理店契約は領事認証とアラビア語訳が必要とされる) |
| 準拠法・紛争解決 | 外国法も選択可能・仲裁が多いが,公の秩序による拒絶に注意 |
こんな方に:エジプト企業を販売店・代理店に指名しようとしている方,エジプト企業から販売店契約のドラフトを受け取った方
① 販売店(代理店)保護法
エジプトには,代理店契約(Agency Agreement)の代理店を保護するために,いわゆる代理店保護法が制定されています。この代理店保護法が適用されると,一定の要件の下,サプライヤーは代理店に対し,契約の終了時に補償金の支払いをしなければならなくなります。例えば,事前予告のない解約,期間の定めのある代理店契約の期間満了前の解約,契約の更新拒絶(代理店の債務不履行の場合を除く)などの場合において,サプライヤーは代理店に対し補償金を支払わなければならないとされています。
実務上のポイント:一般に,この代理店保護法は,商品をサプライヤーから仕入れて利益を上乗せして転売する販売店(Distributor)に対しては適用がないとされています。もっとも,エジプトの裁判所が類推適用のようにして販売店契約に対しても代理店保護法の考えを及ぼすことがないという保証もないので,現地弁護士に最新の情報を確認するなどの注意が必要でしょう。
② 登録制度
エジプトには,代理店契約を当局に登録しなければならないという制度があります。そのため,当局への登録が原因で,旧代理店との契約を解消して新代理店との契約に移行するのが困難になるなどの事情も存在しえます。登録をしない代理店に対しては,刑事罰なども定められています。エジプトの実務では,登録をせずに現地で代理店活動をするということはあまり現実的ではないようですので,注意が必要です。
③ 言語
販売店契約書(Distribution/Distributorship Agreement)の言語を特に制限する法律はないので,英文で契約書を作成することが可能です。他方,代理店契約(Agency Agreement)については,日本で認証を受けた上で,エジプト領事館において現地使用のための認証を受けて,かつ,アラビア語に翻訳される必要があるとされています。
④ 準拠法・紛争解決
エジプトでは,販売店契約に関し準拠法をエジプト法にしなければならないという規制はないため,外国法を準拠法とすることも可能です。また,エジプトはニューヨーク条約加盟国です。そのため,日本企業とエジプト企業との間の販売店契約の場合,紛争解決については,強制執行の便宜を考え,裁判ではなく仲裁(Arbitration)を選択することが多いです。
ただし,エジプトの裁判所は,外国の判決または仲裁判断を「公の秩序」を理由に拒絶することが可能とされていますので,注意が必要です。特に前述した補償金支払いについて免責するような内容は,エジプトの裁判所は強制力を認めないと思われます。
エジプトの販売店と契約する前に確認したいポイント
- ✓相手方が販売店か代理店か(代理店に当たると契約終了時に補償金の支払いが必要となる場合がある点)
- ✓代理店契約とする場合,当局への登録・領事認証・アラビア語訳の手続を想定しているか
- ✓契約終了時の補償金を免責する条項が,エジプトでは認められない可能性を考慮しているか
- ✓仲裁を選択する場合も,公の秩序を理由に執行が拒絶されうる点を踏まえているか
【ご注意】本記事は,執筆・更新時点において一般的なレベルで調査した結果を参考情報として記載したものにすぎず,個別の案件についての法的助言ではありません。各国の法令・判例・実務は改正等により変更されることがあり,本記事の内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではありません。実際にお取引を検討される際は,必ず現地の法律に精通した弁護士に最新の情報をご確認ください。
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弁護士 菊地正登(片山法律会計事務所)/相談・案件実績 2,931件