Observe(英文契約書用語の弁護士による解説)
英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Observeがあります。
これは,英文契約書で使用される場合,通常,「(法律や規則など)を守る/遵守する」という意味で使用されます。
類義語には,comly with..., follow..., adhere to..., in compliance with..., in accordance with...などが挙げられます。
英文契約書には,よく「適用される法律や規則(applicable laws and regulations)を遵守する」ことが義務付けられる条項が挿入されます。
このような条項の中で,observeという英文契約書用語が使われることがあります。
適用法令などを守るのはあえて契約書で規定しなくともよい当然のことなのであまり重要ではないと思われる方もいらっしゃるかもしれません。
ただ,契約書に適用法令などの遵守条項があった場合,一応注意してその内容をチェックしたほうがよいかと思います。
というのは,単に「適用法令を守らなければならない」=shall observe applicable laws and regulationsとされた場合,理屈の上では,世界中のあらゆる法律や規則のうち,自社に適用されるものすべてを遵守しなければ契約違反になるおそれがあるからです。
日本法で考えたとしても,企業が営業するのに影響を受ける重要な法律を守ることは当然ですが,適用される法律はそうした主要なものばかりではありません。
例えば,行政上の細かい届け出義務など,どちらかというと些細な手続き上の義務にすぎないルールなども中には存在します。
個人レベルで考えれば,法律や規則については,車での駐車禁止違反から,窃盗などの犯罪まで法律違反といっても様々だと理解できると思います。
こうしたいわば細かい違反についても,理屈の上では法令違反となり,すなわち,法令遵守を義務付けた契約違反と解釈されかねないのです。
そのため,observeを含め,法律遵守の表現が登場した場合は,事業の運営に支障が出るような主要な法令違反のみが契約違反になりうるように表現を変更するのがよいでしょう。
適用法令を遵守するという広い表現が,必ずしも細かいあらゆる法律違反まで契約違反となるように解釈されるというわけではないと思いますが,厳密に言うとそのように解釈される危険性はあるので,慎重を期して契約内容を審査したほうが良いかと思います。
とりわけ海外取引では,文化も考えも違う外国企業と取引するわけですから,どのような主張を後でされるか,国内での取引よりも予想が付きませんので,油断しないようにするのが大切です。