英文契約書の相談・質問集360 合弁契約書や株式譲渡契約書の準拠法はどう考えるべきですか。

英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「合弁契約書や株式譲渡契約書の準拠法はどう考えるべきですか。」というものがあります。
例えば,日本企業がある国に進出することを決め,現地国のパートナー企業と共同出資して新たな法人を現地で設立するという合弁事業を計画したとします。
この場合,パートナー企業と合弁契約書(Joint Venture Agreement: JVA)を締結します。
また,外国法人から株式を譲り受けて現地法人を買収するというような場合もこの設問に関係します。
この場合は,株式譲渡契約書(Stock Purchase Agreement)を締結します。
これら合弁契約書や株式譲渡契約書において準拠法を定める場合にはどのように考えるべきでしょうか。
合弁契約の場合,外国に法人を設立するため,どうしてもその現地の法律を無視できません。
例えば,現地法人の運営方法や株式に関する事項については現地の法律が適用されざるを得ません。
取締役会決議の有効要件や,どこまで決議要件を変更できるのか,株式譲渡の有効要件は何かなどは,日本で言う会社法に相当する現地の法律に従わざるを得ないということです。
取締役会決議に瑕疵(問題)があるので決議を取り消したいというようなことがあれば,現地の法律を調査し,対応することになるでしょう。
こうした事情があるため,合弁契約書においては通常合弁会社が存在している国の法律を準拠法とするのが一般的です。
また,株式譲渡契約書においても,株式譲渡の有効要件や,対象外社の法的問題を検討する際には現地法が関わるので,やはり現地法を無視できません。
例えば,労働者に未払い賃金が発生しているかが特定の労働者と争いになった場合,現地の労働法で考えざるを得ないことが多いでしょう。
そのため,株式譲渡契約書においても通常は現地法を準拠法と定めます。
では,これらの契約において準拠法を現地国の法律以外の法律にすることは事実上不可能なのでしょうか。
そうではありません。例えば,合弁事業で表明保証違反があったので損害賠償請求をしたいとか,株式の売買に関して売買契約の解除や損害賠償請求を行いたいなどとなった場合,この部分については例えば日本法を適用することとしたいという考えはありえます。
上記の問題については,現地の法律が強行的に適用される場面とは言い難いため,日本法を適用して解決することが理論上考えられるからです。
ただ,このような準拠法の定めを置くと,紛争の内容によっては,現地法を無視することができず,その紛争を解決するときに,ある課題については現地法で考え,ある課題については日本法で考えるというちぐはぐな事態となりかねません。
そのため,紛争解決に時間がかかったり,却って事態の収束に混乱を招くということもありえます。
また,準拠法は紛争解決条項と密接に関わっており,日本法を準拠法とする場合,日本の仲裁や訴訟での解決を規定することが多いですが,上述のとおり,紛争の内容によっては現地法が関わらざるを得ませんので,紛争解決の方法としてこのような定めが妥当かという問題もあります。
以上のような理由から,クロスボーダーの合弁契約書や株式譲渡契約書の準拠法については,現地国の法律とされることが多いことになります。

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