英文契約書の相談・質問集349 交渉時に契約当事者がはっきりしないのですが。
英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「交渉時に契約当事者がはっきりしないのですが。」というものがあります。
契約交渉をしている際には,思いの外多数の利害関係人が絡んでくることがあります。
そのビジネスのポテンシャルが高ければ高いほど,利権をめぐり多くの利害関係人が少しでも利益に与ろうとあれやこれや理由をつけてその事業に絡もうとしてきます。
ただ,一般的にはビジネス上の利害関係はきちんと交通整理をしてできる限りシンプルにしたほうが良いかと思います。
なぜなら,多数の利害関係人が絡むと,責任の所在があいまいになり,権利義務の帰属先,問題が起きた際に損失を与える先などが増え,ビジネスが必要以上に複雑化する傾向にあるからです。
あくまで法的な視点から言えば,法律関係はシンプルになっているほうが,万一問題が起きた際にも,問題の所在の把握もしやすいですし,修復が容易です。
そのため,自社の取引先はできるだけ少なく絞り込み,その取引先との間でできるだけわかりやすい契約を結ぶのが基本となるでしょう。
一つの契約に複数の当事者が絡み,役割も責任もバラバラとなれば,いざ問題が起きたときに,責任のなすりつけが起こり収集がつかなくなるおそれが高まります。
また,交渉している人間が複数の組織に所属していたり,その人間が所属している会社にグループ企業があったりすると,その人間を通じて一体どこの企業と取引をしようとしているのかがあいまいになり,契約締結の土壇場で揉めることがあります。
親会社と取引するものだと思って交渉をしていたら,いざ契約の段階になって子会社との契約であることが判明するなどです。
当然ですが,取引先の財務状態は良好なものである必要がありますし,社会的な信用度も高いほうが望ましいです。
そのため,取引先の選定は慎重になるべきですが,実際に交渉の矢面に立つのは人間ですから,その人物がいったいどこの組織を代表して交渉しているのかは早い段階で明確にすべきです。
必要があれば,覚書(MOU・LOI)などで取引の関係者や取引先当事者を明確にし,それぞれが予定している契約関係を早期に明らかにしておくことが望ましいでしょう。
いざ契約という段階になって,思わぬ利害関係人との契約を要求されたり,想定していた当事者以外の者との取引を求められたりすることがないように交渉の進め方から気を使わなければなりません。
交渉においてはできる限り「寝耳に水」となるような自体は避け,すべてを想定内の事態に収めて優位に交渉を進めるように心がける必要があります。
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