Act of God(英文契約書用語の弁護士による解説)
英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Act of Godがあります。
これは,英文契約書で使用される場合,通常,「天災/不可抗力」という意味で使用されます。
Act of Godなので,直訳すると文字どおり「神の所業」という意味ですから,人間の支配力が及ばない,コントロールできないということを意味し,すなわち,天災や不可抗力を意味することになります。
このAct of Godは,英文契約書の一般条項(General Provisions)・ボイラープレート条項の1つである不可抗力(Force Majeure)条項でよく見かけます。
不可抗力(Force Majeure)条項は,当事者が契約違反・債務不履行をした場合でも,その原因が不可抗力に該当する事由である場合には,その当事者は損害賠償責任などを免れる(免責)という内容であることが多いです。
この不可抗力(Force Majeure)では,不可抗力に該当する事由が具体的に列挙されていることが多いのですが,そのうちの1つの例としてAct of Godがよく挙げられています。
天災はまさに人の手ではどうしようもない,不可抗力の典型例のため,具体例としてよく挙げられるわけです。
もっとも,いわゆる天災が起きれば何でも免責されるわけではなく,その義務を履行する障害にはならなかった場合は,不可抗力事由が現に生じていても免責にはならないことがありますので,注意して下さい。
例えば,ある地域に地震が起こり,一般の電車などが一時運休したけれども,道路は問題なく通っていて,輸送トラックにて納期までに製品を届けることが可能であったという場合に,製品の納品が遅延したというようなときは,免責が認められない可能性があります。
Act of Godに該当する事象があれば免責されるという単純な問題ではなく,不可抗力事由と契約違反・債務不履行との因果関係も必要ですので,注意しましょう。
なお,不可抗力(Force Majeure)条項を定める際には,その条項で挙げた具体的な不可抗力事由に限って免責する趣旨(限定列挙・制限列挙)なのか,具体例はあくまで例であってその他の類似の事由(当事者のコントロールが及ばない事由)を含む趣旨(例示列挙)なのかが明らかになるように規定しましょう。
そうしないと,具体的に挙げられていないが,当事者がコントロールできない事由により債務不履行となったときに,紛争になる可能性が高くなるからです。
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