Benefit of time(英文契約書用語の弁護士による解説)
英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Benefit of timeがあります。
これは,英文契約書で使用される場合,通常,「期限の利益」という意味で使用されます。
Benefit of timeという用語そのものが英文契約書に登場する機会はそれほど多くはありませんが,概念としては重要です。
例えば,売買代金の支払債務を負っている買主が,売主から分割での支払いを許されていたとします。
仮に5回に分割して支払う約束になっていたとしましょう。
ところが,買主が約束の期限までに2回目の分割の代金を支払わなかったとします。
このようなときに,買主が残り4回の支払分をすべてまとめて支払わなければならなくなることを「期限の利益の喪失」といいます。
つまり,残金すべての弁済期が到来してしまうということになります。
ある日時までに支払いをすればよいというのは,支払いをする当事者にとって有利ですので,これを「期限の利益」=benefit of timeと呼んでいます。
そして,支払いを怠ったことによりこれを失うことになるので,期限の利益の喪失と呼ぶわけです。
こうした期限の利益の喪失=loss of benefit of timeの規定が契約書に定められていることがあります。
なお,売主の立場からすると,もし上記のような期限の利益の喪失=loss of benefit of timeの定めをしておかないと少々困ったことになります。
というのは,買主が2回目の支払いを約束どおりできないということは,買主の財務状態が悪化していることが考えられるところ,期限の利益の喪失条項が定められていないと,それでもなお残り3回分の支払いを分割して払えばよいという利益を買主に与えたままになってしまうからです。
売主からすれば,財務状態が悪化している買主に対して,なお分割払いの期限の利益を与えるのは危険であり,一刻も早く代金を全額回収できるような状態にすることが必須にもかかわらず,期限の利益の喪失の定めがないとこれができないということになりかねません。
以上のように,benefit of timeは,期限の利益を得ている側にとっても,与えている側にとっても利害関係が大きいので,英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際には注意すべき用語です。
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