表題のテーマにて,私が発行しているメールマガジンの2012年12月号【国際契約における準拠法と管轄はどうすればいいの?】から抜粋した記事を以下にペーストしています。
準拠法とは,
当事者が締結した契約関係や,
これに基づき生じる解釈の争いや紛争
などを規律する法律のことです。
日本で日本企業同士が取引に入り,
上記の問題が起こった場合,
契約書に定めがなければ,
日本法が適用されますから,
この場合,通常準拠法は問題となりません。
ところが,国際取引ではそうはいきません。
そもそもどこの国の法律が適用されるのか不明です。
例えば,日本法などと,
もし契約書に定めていれば,
裁判所がこれを準拠法としてくれる
ことが多くの国で通常といえるでしょう。
もし契約書に書いていなければ,
国際私法の問題として,
各国が独自の基準により,
どの国の法律を適用するかを決めるという
場合が多いと思います。
例えば,その契約に密接に関わっている地
の国の法律,などという基準で決められます。
したがって,契約書で決めておいた方が
予め準拠法が見えやすいですから,
安全性が増します。
管轄とは,いざ紛争が裁判になった場合に,
どの裁判所がその紛争を取り扱うのか
という問題です。
これは準拠法とは別です。
観念的には,例えば,英国法を
準拠法として東京地裁で裁判をする
ということもありうるからです。
ただ,通常は,準拠法と管轄裁判所を
同一国にします。
多くの国がこの裁判管轄を当事者の合意により
定めることができるとしているため,
契約書で合意しておくわけです。
なお,合意には専属的合意管轄と
非専属的合意管轄の2種類があります。
専属的合意管轄は,
合意したその裁判所のみが管轄を有し,
その他の裁判所の管轄を認めないという
ものです。
対して,非専属的合意管轄の方は,
合意した裁判所に管轄を認めるが,
その他の裁判所から管轄を奪うものではない
というものです。
したがって,その他の裁判所が
管轄を認めれば,その裁判所でも
裁判ができることになります。
とすると,日本企業にとっては,
日本法と契約書に書ければ,
慣れ親しんだ?法律がいざというときに
適用されて,有利なように思えます。
そして,管轄についても日本とすれば,
日本の弁護士にお願いして,
日本で裁判ができるので,
有利そうです。
ただ,幾つか注意点があります。
まず,外国企業と契約するとき,
日本法を準拠法とすることに了解を得られるか
という問題が根本的に存在します。
これにはバーゲニングポジションと呼ばれる,
要するに当事者の立場の強さによって
決まる場合が多いです。
日本企業が強ければ,
日本法を準拠法とできるかもしれませんが,
逆だと難しいかもしれません。
また,仮に日本法に基づき,
日本の裁判所で裁判をして勝ったとして,
その判決を執行するときに問題が生じます。
外国企業が敗訴判決に従って,きちんと
お金なりを払ってくれれば問題ありません。
では,判決に不服があり,払ってこなければ
どうなるでしょう?
この場合,当該外国企業の保有財産に
強制執行
をかけることになります。
もしこの外国企業の財産が当該外国にしかなければ・・・
当然外国で執行をします。
そのためには,当該国で改めて判決を得なければならない
ことがほとんどです。
これがやっかいなのです。
無事に日本で勝訴判決を得ても,
これに従って,外国で勝訴判決を得るのは,
そう簡単ではないのです。
したがって,そもそも現地の裁判所に
管轄を認めておいて,そこで最初から
判決を得たほうが,時間的にも弁護士費用的にも
良いという場合もあるのです。
そのため,敢えて非専属的合意管轄としておくことも
考えられます。
また,執行の便宜を考え,仲裁合意をしておくことも
あります。
仲裁合意とは,裁判外紛争解決手続の
一つである仲裁手続を利用する
旨を約束する当事者の合意をいいます。
これがあれば,仲裁手続を利用する
ことが可能です。
もし仲裁判断で勝利すれば,
これを判決に比べて簡単に外国で執行することが
できる点がメリットとされています。
これはニューヨーク条約で定められています。
したがって,ニューヨーク条約という条約に加盟している国
同士であれば,翻訳書の添付など比較的簡単な簡単な手続きで
仲裁判断を外国で執行できるということになります。
ただ,仲裁では仲裁人の費用も負担しなければならない
など裁判とは異なる要素もあるので,
事前に調べる必要があります。
このように,準拠法・管轄をめぐっては,
特に国際法務では難しい問題をはらんでいます。
慎重に検討したいところです。
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