法務部員が英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際に役に立つ英米法の基礎知識です。

 

 今回はFrustration(フラストレーション)です。

 

 契約締結時に予期できなかった,当事者のコントロールが及ばない偶発的な事情の発生により,契約が後発的に履行できなくなった(契約の目的を達成することが不可能となった)場合に,契約が終了することを指します。

 

 このような場面を「後発的履行不能」などと呼びます。どのような場合に契約の履行が不可能となったと言えるのかについては,程度問題,ケース・バイ・ケースという面があります。

 

 例えば,不動産譲渡契約において目的物たる建物が,契約成立後,譲渡実行前に地震で倒壊したというような場合は,frustrationにより契約は終了したと言えるでしょう。

 

 対して,運送契約において,気候条件,ストライキ,戦争などによって目的物を運ぶことができないなどという場面を想定してみて下さい。この場合,しばらく待てば運送が可能となることもあるでしょうし,反対に,そのような期待は持てない場合もあるでしょう。

 

 同じ事象が起こったとしても,その具体的内容によって結論が変わることが予想されます。そのため,契約の存続可能性は,契約の目的,契約の履行の障害となっている事由の継続性等を基準にケース・バイ・ケースで判断されることになります。

 

 英国におけるHouse of Lords(当時の最高裁判所に相当する貴族院)による著名判例の一つにDavis Contractors Ltd v. Fareham Urban District Council [1956] AC 696という判例があります。

 

 このケースでは,危険回避のため海上運送が本来約束されたルートを取れず迂回せざるを得ないが,迂回すると何倍も時間と費用が増大する場合に,frustrationの理論により契約が終了するかという点が争われました。結論として,House of Lordsは,本件では時間と費用増大は無関係であり,なお履行可能であるとして,frustrationの成立を否定しました。

 

 しかし,目的物の性質が保管を許さないものであったり,契約の目的が明らかに履行期を重視していたりする場合には別の結論となり得るのであり,まさに個別具体的な判断にならざるを得ないでしょう。

 

 したがって,契約書作成の際には,このようなfrustrationという曖昧な概念に頼らなくて済むよう,いわゆるforce majeure(フォース・マジュール)という条項により,不可抗力による後発的履行不能の事由及びその帰趨などについて明確化しておくことが肝要です。

 

 仮にfrustrationに該当する事由が認められた場合には,その発生時に契約が自動的に(相手方からの解除の意思表示等を待たずに)終了し,両当事者は契約の履行義務から解放されます。契約が終了したことにより,一方当事者に既払金があるような場合,これを相手方へ返還しなければならない場合もあります。

 

 ここで,注意を要するのは,コモン・ローでは,一度履行を約束した以上は,当事者は簡単にはその義務から解放されないという考えが基本であるということです。

 

 したがって,前述したとおり,契約当事者が行うべきことは,契約締結段階において,当事者を責めることができない不可抗力とはどういう事由を指し,いかなる事由が生じた場合に契約が終了することとなるのか,そして,終了した場合どうなるのかについてできるだけ具体的かつ詳細に規定しておくことです。

 

 そうでなければ,履行義務が存続するのか消滅するかについて疑義が生じ,また,履行義務が消滅したとして何を当事者がしなければならないのかについて把握できず,重大な障害を生じることになりかねません。

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