法務部員が英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際に役に立つ英米法の基礎知識です。

 

 今回は,Liquidated Damages(リクイデイティド・ダメージズ)とPenalty(ペナルティ)の違いについて簡単に説明します。英文契約書を翻訳,チェック,修正などする際に役に立つと思います。

 

 Liquidated damagesは「損害賠償の予定」条項のことです。日本語では,リキダメなどと略されて呼ばれています。

 

 これに対して,penaltyは「違約罰」条項を意味します。

 

 日本では,原則として双方有効ですが,英国コモン・ローの下では,前者は有効ですが,後者は無効です。

 

 つまり,英文契約書に,ある条項に違反した場合は一定の金額を損害賠償として払うと記載されていても,その条項がpenalty(違約罰)を定めたものだと解釈される場合は,契約違反をされた当事者は,記載された金額を請求できないということになります。

 

 Liquidated damagesは,要するに,契約違反により生じ得る損害額を事前に見積り(genuine pre-estimate of loss),契約違反の際にはその額を賠償額とみなすという取決めです。

 

 対して,penaltyは実際の損害額とは無関係,またはこれを遥かに超えるような額を合意し,いわば履行義務者に対し,予定制裁という脅しをかけることにより,履行を強制するような条項を指します。

 

 例えば,定められた賠償額が,契約違反から生じうる実際の最大の損害額と比較して,法外で受け入れがたい額(extravagant and unconscionable)である場合にはpenaltyとなります(Interfoto Picture Library Ltd v Stiletto Visual Programs Ltd [1989] 2 QB 433など)。

 

 House of Lords(当時の最高裁判所に相当する貴族院)の判例には,損害額の事前の見積もりが困難な事情があれば,それが法外な受け入れがたい額のレベルでなければ,見積もりが多少不相応な感があっても,liquidated damagesとして許容されると判断したものがあります(Dunlop Pneumatic Tyre Co Ltd v New Garage & Motor Co Ltd [1914] UKHL 1)。

 

 しかしながら,両者の区別は曖昧なものですから,liquidated damages条項を定めるには,内容を慎重に検討する必要があります。

 

 このような流れの中,英国の2015年の最高裁(現在のThe Supreme Court)判例Cavendish Square Holding BV v Talal El Makdessi)では,この点が修正され,損害賠償の予定条項が,それにより保護を受ける当事者の正当な利益(a legitimate business interest)との均衡を失した法外なレベル(extravagant, exorbitant or unconscionable)でなければ,ペナルティとはならず強制力がある旨が判示されました。

 

 ここで,注意を要する点は,単に契約書に「この条項はpenaltyの趣旨ではなくliquidated damagesである」旨記載すればそのとおりに効果が認められるというものではないという点です。

 

 あくまで事実関係や当該条項の実質的な内容により判断されます。

 

 したがって,損害賠償額について事前に取り決める際には,penalty条項として無効となることがないように,公平性を維持しつつ,見積もりを合理的に行い,予定額を定める必要があります。

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