英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際に登場する英文契約書用語に,Prevail over...があります。

 

 これは,英文契約書で使用される場合,通常,抵当権や先取特権などの担保が他に「優先する」という意味でよく使用されます。

 

 不動産などの一つの担保物件に複数の担保権が設定されていることがよくあります。この場合,仮に担保物件を競売などで売却したとして,その代金で全部の担保権者の債権額につき弁済できれば問題はありません。

 

 しかし,担保物件の価値が下落しているような場合,競売によって得られる代金では全部の担保権者の債権を満足させられないことがあります。

 

 このような場合に,どの担保権が優先的であるか,つまり他の担保権者よりも先に弁済を受けられるのかが問題となります。

 

  劣位の担保権者は,当該不動産の売却代金から自己の債権額全額の弁済を受けられないことがあります。

 

 このような関係を処理するために,上記用語が用いられることがあります。

 

 Prevailそのものは,英文契約書では,「条項などが他に優先する」という意味でよく使用されます。

 

 例えば,In the event of the provisions  resulting in a conflict between the Individual Contract and this Agreement, the former will prevail.(個別契約と本契約の条項が矛盾するときは,個別契約の条項内容が優先する。)などとして使用されます。

 

 販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)などの基本契約があり,それを基礎にして,個別契約として商品の発注と受注が繰り返されるというパターンの場合,あるときの個別契約で基本契約の内容を変えたいということがありえます。

 

 その際,発注書と受注書で合意する内容が基本契約の内容に矛盾することになります。

 

 ところが,英文契約書に基本契約の内容と個別契約の内容が矛盾した場合,どちらが優先的に適用されるのかが書かれていないと,本当にその方法で基本契約の内容を変更できるのかについて疑問符がついてしまいます。

 

 さらにいうと,基本契約書には一般条項(ボイラープレート条項)として,Amendment(改定)という規定が入っていることが多いです。

 

 これは,基本契約書の内容を変更するには,権限ある者がサインする書面によって合意しなければ変更の効力がないという内容の条項です。 

 

 この条項により,担当者が勝手に基本契約の内容を変更できないようにする狙いがあります。 

 

 このAmendment(変更)条項によって,先程の発注書と受注書による変更合意は効力がないとされてしまう可能性が高いです。

 

 したがって,基本契約と個別契約のどちらが優先するのかを契約書で定めておくのが安全です。

 

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