Void/voidable(英文契約書の解説〜英国法・コモンローの観点を中心に〜)

 

 法務部員が英文契約書をレビューする際に役に立つ英米法の基礎知識です。



 今回は,契約の無効(void),取り消し(voidable)の違いについて簡単に説明します。

 

 

 日本法同様,コモン・ローにおいても無効・取り消しという概念の区別が存在します。

 

 

 Voidとなるのは,例えば,強行法規/強行規定(当事者の合意によって排除できない法律)に違反したり,mistake(日本法でいう錯誤のようなもの)があったりした場合などです。

 

 

 Mistakeの例としては,契約当事者双方が事実を誤認していた場合(mutual mistake)と,契約当事者の一方だけが事実を誤認していた場合(unilateral mistake)とに分けられます。

 

 

 Mutual mistakeの代表的な事例(リーディング・ケース)としては,Raffles v Wichelhaus [1864] 2 H. & C. 906, 159 Eng. Rep. 373が挙げられます。

 

 

 本件では,コットン売買において,'Peerless'という船舶を用いて目的物を海上輸送するという契約が締結されました。ところが,その後,10月と12月に出港予定の‘Peerless’という名前の船舶が2隻あることが判明しました。

 

 

 当時コットン市場は変動していたので,買主は10月輸送のものだと思った,他方で売主は12月輸送のものだと考えていたと法廷でそれぞれ主張しました。結果,mutual mistakeにより,売買契約は無効と判断されました。

 

 

 Unilateral mistakeの著名判例としては,Hartog v Colin & Shields [1939] 3 All ER 566が挙げられます。

 

 

 本件では,うさぎの皮の売買契約を巡りmistakeが問題となりました。当時うさぎの皮の売買は数単位(per piece)で売買する慣習があったのですが,売主が誤って重量であるポンド単位で(per pound)でオファーをしてしまいました。

 

 

 そのため,買主は大きな利益を得ることとなりましたが,裁判所は,売主にunilateral mistakeがあり,さらに買主はこれを知っていたと認定し,同売買契約を無効としました。なお,unilateral mistakeが認められるには,このように,一方当事者が,相手方当事者が誤認していることを知っているか,または,知るべきであったという状況がなければなりません。

 

 

 以上に対して,voidableとなるのは,例えば,契約締結の際にmisrepresentation, duress(脅迫),undue influenceなどが認められた場合です。

 

 

 最後のundue influenceは日本法の概念で置換できるものがないですが,訳としては,「不当な威圧」などとされるのでしょう。例えば,弁護士とクライアント,銀行のマネージャーと顧客などのように特別な信任関係(fiduciary relationship)がある場合に特に問題になるものです。

 

 

 Duressに関する著名な判例としては,North Ocean Shipping v Hyundai Construction (The Atlantic Baron) [1979] QB 705が挙げられます。

 

 

 このケースでは,船舶の売買において,船舶建造会社が買主に対し,USドルの急激な下落を理由に,本来の売買価格に10%上乗せするように要求しました。

 

 

 買主は,そのような法的義務がないとして拒絶しましたが,これに対し,建造会社は,もし要求を受け入れなければ,契約を破棄すると述べました。買主は,仮にそうなれば,有効な両者のビジネス関係を維持できないと考え,上記要求を受諾しました。

 

 

 このような事実関係の下,裁判所は,不当なeconomic duressがあったと認定しました。なお,本件では,マーケットが狭く,買主側に他の選択肢が少なかったため,要求を受け入れざるを得なかった状況を考慮に入れているようです。

 

 

 ここで,voidとvoidableの効力の面での違いを述べておきます。

 

 

 Voidは,契約が無効となり,初めから存在しなかったことになります。そのため,例えば,売買目的物が第三者に転売されていても原則としてこれを取り戻すことができます。他方,voidableの場合,取り消しの意思表示をしない限り,契約は有効です。また,第三者に既に渡った場合は取り消しができません。

 

 

 他にも,取消権を行使しないまま合理的期間(reasonable time)が経過した場合には,もはや取消権行使が許されなくなりますので注意が必要です。この点の著名判例としては,Leaf v International Galleries [1950] 2 KB 8が挙げられます。

 

 

 このケースでは,絵画の売買において,画家が誰であるかについてmisrepresentationがあったため,売買から5年後に買主が取消権(rescission)を行使しましたが,Court of Appeal(高等裁判所)はreasonable timeが既に経過したものとして認めませんでした。

     

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