For any reason attributable to...(英文契約書用語の弁護士による解説)
海外進出・海外展開をするときに必要になる英文契約書を作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語,今回は,For any reason attributable to...という用語です。
これは,英文契約書で使用される場合,通常,「…の責めにきすべき事由により」という意味で使用されます。
たとえば,The Company shall pay the damages to the Customer in case where this Agreement terminates for any reason attributable to it. (当社は,本契約が当社の責めに帰すべき事由により終了した場合には顧客に損害賠償をする。)などとして英文契約書に登場します。
ただ,やや曖昧さを残す表現かもしれません。
日本法では,この「責めに帰すべき事由」というのは「帰責事由」や「帰責性」とも略されて使用されています。
意味としては,ほぼ「過失」と同義と捉えて良いかと思います。
日本的な表現という印象がありますが,外国企業が作成した英文契約書のドラフトでもfor any reason attributable toという表現は登場します。
ただ,海外の企業がドラフトした英文契約書でこの帰責事由や帰責性という表現が使われることはあまり多くはないです。
この表現が使われることが多いのは,準拠法を日本法として,日本語の契約書を英文にするなどという場面です。
因みに,日本法のもとでは債務不履行責任が生じるためには債務不履行をした当事者の責めに帰すべき事由が必要とされていますが,英米法では債務不履行責任は債務不履行をした当事者に過失がなくとも発生しますので注意が必要です。
そのため,例えば英米法を準拠法とする場合,当事者の責めに帰すべき事由がない場合(不可抗力事由の場合)は,債務不履行責任が生じないことを明記しないと,不可抗力事由に基づく債務不履行でも責任を生じることになります。
反対に,日本法を準拠法とした場合でも,相手企業が日本法の場合は帰責事由がないと債務不履行責任を負わないということを知らずに契約してしまい,あとでその点をめぐり紛争になる可能性があります。
そのため,準拠法をどうするかにかかわらず,債務不履行はどのような事由に基づいて生じ,かつ,その責任範囲はどこまでかをよく話し合って契約書で明確化しておくことが重要です。
このように,英文契約書では,国際取引が前提となっていることが普通なため,当事者間に法的な共通理解が存在しないことが多々あります。
したがって,国際取引では,一定の理解を常識とはせず,きちんと当事者の理解を文章化して契約書にしておくことがより大切となります。