海外取引によくある並行輸入を巡るトラブルとその解決法

 

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 日本の晦BC販売は,フランスの街YZ製造から「フォンセ」というブランドのアクセサリーを独占販売店として輸入し,日本国内で販売することになりました。

 

 

 晦BC販売の社長は,何度もフランスを訪れ,街YZ製造の社長を口説き,ようやく勝ち取った独占販売権(Exclusive Distribution Right)でした。



 独占販売店契約(Exclusive Distribution Agreement)についてはこちらの記事で解説しています。

 

 

 その後,晦BC販売は喜び勇んでオンラインと実店舗での商品販売を展開し,販促活動・マーケティング活動に勤しみました。

 

 

 雑誌やテレビに取り上げられることもあり,徐々にフォンセの知名度はあがり,20代・30代の女性をターゲットにブランド化されていきました。

 

 

 実店舗でもオンラインでも売れ行きは好調で,時折取材を受けるような状態となり,販売は好調でした。

 

 

 すべては順調だと思われたとき,ある問題が晦BC販売の社長の頭を悩ませることになりました。

 

 

 それは,いわゆる「並行輸入」の問題でした。いくつかの日本の小売店がフォンセの商品をオンラインで取り扱い,販売しているのです。

 

 

 晦BC販売の社長は,立腹し「うちがフォンセの独占販売権も商標等のライセンスも持っているのだから,他の店舗は違法行為をしている。販売の差止や,損害賠償を求めるように。」と部下に指示しました。

 

 

 そこで,部下は,販売差止等ができるのか調べることにしました。



 確かに,外国ではこのような行為を禁止しているところもあるようですが,日本では,一定の要件(いわゆる,@「商標の同一性」,A「出所の同一性」,B「品質の同一性」等)を充たすと,いわゆる並行輸入として適法であり,他の小売店もフォンセの商品を販売できるとの結論に達しました。 



 もちろん,晦BC販売は,街YZ製造からフォンセの販売について日本での独占販売権を得ていますから,街YZ製造が,フォンセを日本の他業者に流しているとすれば,街YZ製造に対して契約違反を主張できます。 



 そこで,部下は,街YZ製造に対して事情を説明し,事実を確認しました。



 街YZ製造の回答は,「うちは貴社以外に販売していない。」というものでした。



 部下は,その回答を受けて,さらに調査を進めたところ,街YZ製造がフランス国内で販売している先の卸業者から,問題の日本の小売店が購入している事実が判明しました



 卸業者は,晦BC販売と契約関係にありませんから,これでは苦情は入れられません。



 もちろん,卸値は,晦BC販売の方が低いはずで,粗利率も高いはずなのですが,その他の意図もあり,日本の小売店は廉価でその商品を販売し続けていたのです。



 晦BC販売の部下は,社長に報告しましたが,結局有効な手立てがないことがわかり,社長は納得がいきませんでした。



 一定の利益は得られるものの,廉価で他の小売店で販売されるため,結局ブランド戦略の変更を余儀なくされました



本事例の解決法


 本件では,法務を離れますが,そもそも,街YZ製造のフランス国内での取引先,取引先との契約内容,卸値,商品の販売しやすさなど,商品選定の時にもう少し注意するべきだったと言えるでしょう。



 本件は,法的対処で解決することが困難な事案です。



 取りうる対策としては,街YZ製造を通じて,フランスの卸売業者に対して,日本向けには晦BC販売以外には販売しないように交渉してもらうことが考えられますが,後述するとおり,これは独占禁止法違反になる可能性があります。

 

 

 また,新たに,街YZ製造が契約する卸業者には予めそのように契約書に定めることを求めることも考えられます。



 その他の対策としては,直接卸業者に掛け合って,当該卸業者とも独占契約を結び,他社への販売を防ぐということも考えられます。



 ただ,こうした契約交渉を行う際は,独占禁止法,競争法,反トラスト法などの規制法に反しないかどうかもチェックの必要があります。



 ちなみに,日本の独占禁止法上,下記の場合は独占禁止法違反になるとされています。


 

 1.「並行輸入業者が供給業者の海外における取引先に購入申込みをした場合に、当該取引先に対し、並行輸入業者への販売を中止するようにさせること」



 2.「並行輸入品の製品番号等によりその入手経路を探知し、これを供給業者又はその海外における取引先に通知する等の方法により、当該取引先に対し、並行輸入業者への販売を中止するようにさせること」


 

 このように,並行輸入を妨害する行為をすると独占禁止法に違反する可能性を生じます。



 詳しくは公正取引委員会のこちらの記事の「第2 並行輸入の不当阻害」をご覧下さい。



 上記記事の内容を簡単に以下にまとめています。詳しくは上記記事を直接ご覧ください。



 まず,公正取引員会が問題になると考えている方法は下記の7つのパターンです。下記の(1)〜(7)事例でその行為が商品の販売価格を維持するためになされた場合に限り問題となる可能性があります。


 

 なお,当然ですが単に「目的は価格維持のためではない」といえば済むということではなく,あらゆる証拠を考慮して実質的にどういう目的でなされたかが判断されますのでご注意ください。

 

 

 つまり,公正取引委員会は,例えば


 [1] 商品仕様や品質が異なる商標品であるにもかかわらず,虚偽の出所表示をすること等により,一般消費者に総代理店が取り扱う商品と同一であると誤認されるおそれのある場合,または,


 [2] 海外で適法に販売された商標品を並行輸入する場合に,その品質が劣化して消費者の健康・安全性を害すること等により,総代理店の取り扱う商品の信用が損なわれることとなる場合には,


下記の並行輸入に対する行為も違法となるものではないと考えているといえます。


 

(1) 海外の流通ルートからの真正商品の入手の妨害

 

 公正取引委員会は具体例として以下のケースを挙げています。

 

 [1] 並行輸入業者が供給業者の海外における取引先に購入申込みをした場合に,当該取引先に対し,並行輸入業者への販売を中止するようにさせること



 [2] 並行輸入品の製品番号等によりその入手経路を探知し,これを供給業者又はその海外における取引先に通知する等の方法により,当該取引先に対し,並行輸入業者への販売を中止するようにさせること

 

 

 上記の行為が商品の価格維持のために行われたと認められる場合は独占禁止法違反として違法になりますので注意しましょう。

 

 


(2) 販売業者に対する並行輸入品の取扱い制限

 

 (2)は,並行輸入品の取扱業者に対し商品の出荷を停止したりして並行輸入品を取り扱えないようにするような妨害行為を指し,それが契約対象商品の価格を維持するために行われる場合には,不公正な取引方法に該当し,違法となるとされています。


 
(3) 並行輸入品を取り扱う小売業者に対する契約対象商品の販売制限

 

 本来,卸売業者が独占販売店から仕入れた商品をどの小売業者に販売するかは卸売業者が自由に決定できるものであるから,卸売業者に対し,並行輸入品を取り扱う小売業者には契約対象商品を販売しないようにさせる行為は,それが契約対象商品の価格を維持するために行われる場合には,不公正な取引方法に該当し,違法となるとされます。


   

(4)並行輸入品を偽物扱いすることによる販売妨害

 

 商標権者は,偽物の販売に対しては商標権侵害を理由として,その販売の差止めを求めることができるのですが,「並行輸入品を取り扱う事業者に対し,十分な根拠なしに当該商品を偽物扱いし,商標権の侵害であると称してその販売の中止を求めることは,それが契約対象商品の価格を維持するために行われる場合には,不公正な取引方法に該当し,違法となる」とされています。

 


(5)並行輸入品の買占め

 

 独占販売店が変更輸入品を取り扱う業者から対象商品を買い占める行為は対象商品の価格を維持するために行われる場合には,不公正な取引方法に該当し,違法となるとされています。



(6)並行輸入品の修理等の拒否

 

 上記の公正取引委員会の記事を下記のとおり引用します。



 「総代理店は自己の供給する数量に対応して修理体制を整えたり,補修部品を在庫するのが通常であるから,並行輸入品の修理に応じることができず,また,その修理に必要な補修部品を供給できない場合もある。したがって,例えば,総代理店が修理に対応できない客観的事情がある場合に並行輸入品の修理を拒否したり,自己が取り扱う商品と並行輸入品との間で修理等の条件に差異を設けても,そのこと自体が独占禁止法上問題となるものではない。



 しかし,総代理店若しくは販売業者以外の者では並行輸入品の修理が著しく困難であり,又はこれら以外の者から修理に必要な補修部品を入手することが著しく困難である場合において,自己の取扱商品でないことのみを理由に修理若しくは補修部品の供給を拒否し,又は販売業者に修理若しくは補修部品の供給を拒否するようにさせることは,それらが契約対象商品の価格を維持するために行われる場合には,不公正な取引方法に該当し,違法となる」としています。

 

 

(7)並行輸入品の広告宣伝活動の妨害


 商標権侵害や不正競争防止法違反などの理由がないのに,総代理店がその取引先である雑誌,新聞等の広告媒体に対して,並行輸入品の広告を掲載しないようにさせるなど,並行輸入品の広告宣伝活動を妨害することは,それが契約対象商品の価格を維持するために行われる場合には,不公正な取引方法に該当し,違法となるとされています。



 以上から,並行輸入対策を講じる際には販売代理店のほうが法律違反にならないように十分に注意が必要です。


  

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