英文契約書によくある総代理店/総販売店契約のトラブルとその解決法

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ABC製造㈱は,自社商品の輸出を検討することとなり,香港の展示会に出展しました。

そうしたところ,早速スペインの代理店であるXYZ販売㈱から,引き合いがありました。

話を詰めると,XYZ販売㈱の社長は,ABC製造㈱の製品を非常に気に入ったようでスペインを一手に引き受けたいと申し出てきました。

XYZ販売㈱の社長は,販路開拓に非常に自信を見せており,類似のスペイン製の商品よりも付加価値の高いこの商品は絶対にスペインで受けると話していました。

ABC製造㈱の社長は,XYZ販売㈱の社長の熱意と自信と実績を信頼し,その後,メールで何度かやりとりをした後,同社を訪問し,総代理店(販売総代理店/一手販売店)に指名することにしました。

契約書は,スペイン語でしたが,「標準契約書なので,どの業者にもこれで対応してもらっています。」という説明があったのと,一応英語に翻訳したものをざっと読んで,特に不審な点もなかったことから,サインしました。

スペインでの成長という期待を胸に意気揚々と帰国したABC製造㈱の社長。しばらく様子を見ることにしました。

すると,XYZ販売㈱からは,最初の数ヶ月こそ相当数のロットの注文があったものの,その後は減少し,8ヶ月が経ったあたりから注文がピタッと止まってしまいました。

何度も販促,マーケティングに力を入れるようプッシュし,ABC製造㈱からも販促資料を送ったり,商品知識の教育を行ったりと努力をしたのですが,埒が明きません。

やむをえず,ABC製造㈱の社長は,最近引き合いのあった大手の別の代理店を指名することにしました。

部下に契約書をチェックさせると・・・2年間という契約期間で,中途解約条項はなく,販促についての努力義務も規定はなく,最低購入数量条項(Minimum Purchase Quantity)もありませんでした。

他方で,Exclusive Agency Agreementとなっており,契約期間中,スペインでは,XYZ販売㈱以外に代理店/販売店の指名は許されておらず,また,子会社などを利用した販売も禁止されていました。

また,準拠法もスペイン法とされ,裁判管轄もスペインの裁判所とされていました。

結局,強硬に別の代理店を指名したりすれば,XYZ販売㈱から損害賠償請求を受けるリスクがあり,スペインの裁判所での訴訟などになったら対応コストも膨大になるため,別の代理店指名は避けることとなりました。

とはいえ,残り1年以上も契約期間が残されており,その期間の機会損失を受けることも避けたかったため,ABC製造㈱は,XYZ販売㈱との間で合意による契約解除を目指し交渉をすることにしました。

XYZ販売㈱は,自社の低いパフォーマンスはさておき,「契約期間がまだ残っているのに途中で独占権を奪うのであればこれくらいは支払って欲しい」ということで,多額の賠償金を求めてきました。

ABC製造㈱は,結局,社内で事業計画を練ったところ,多額の賠償金を払ってでも総代理店(販売総代理店/一手販売店)契約を解除したほうがよいという結論に至り,大きな損失を計上することとなったのでした。

本事例の解決法

この事例では,以下のように対応すべきだったと言えるでしょう。

①代理店の実績・財務状態・販売計画などを精査せずに安易に総代理店(販売総代理店/一手販売店)指名をすべきではなかった。

まずは,単発での取引からスタートし,その後基本売買契約などを締結し,代理店/販売店のパフォーマンスをチェックし,成績評価が可能になった段階で,総代理店(販売総代理店/一手販売店)としての指名を検討するというプロセスを踏むのが安全であったと言えるでしょう。

②総代理店(販売総代理店/一手販売店)とするとしても,期間の設定にはより一層の慎重さが必要だった。

総代理店(販売総代理店/一手販売店)とすると,他の代理店を指名したりできなくなるため,契約後に終了させたい事情が生じることを予測して,中途解約条項を入れたり,契約期間を短めに設定したりするなどの対策を施す必要があったと言えるでしょう。

③最低購入数量(Minimum Purchase Quantity)または発注の努力目標等を課すことを検討すべきだった。

最低購入数量などが定められていないと,原則的には,代理店は,販促などの努力をせず,販売が少量にとどまっていたとしても,特にペナルティはなく,契約は存続してしまうことになります。

最低購入数量についてはこちらの記事でも解説しています。

そのため,最低購入数量をノルマとして定め,未達となった場合には,契約を解除できるとしたり,独占権を奪って非独占契約に変更したりできるようにすべきだったと言えます。

もし罰則のある最低購入数量を定められない場合でも,せめて発注の努力目標を定めるべきだったと言えるでしょう。

そうすることで,数値に法的拘束力までは認められないにしても購入の目標値が定まります。

これにより,代理店のパフォーマンスが悪い場合には,契約解除までは主張できないとしても,契約終了の補償金交渉などで有利な立場を得られた可能性があります。

④販促,マーケティング活動についての計画と実績を定期的に報告する義務を課すことを検討すべきだった。

販促,マーケティング活動について,完全に代理店に任せているとなると,ベンダー側でコントロールがきかなくなってしまうので,活動報告程度は少なくとも義務付けるべきだと言えるでしょう。

⑤業績等が不振の場合に,中途解約または最低購入数量条項違反で解除ができるような条項を挿入することを検討すべきだった。

最低購入数量未達の場合の解除権については前述しましたが,このような契約違反がない場合でも,一定期間の予告期間を設けた上で,契約を期間中でも途中で解約できる中途解約条項(termination without cause)を入れておくことも考えられました。

こうしておけば,契約期間が長めに設定されていても,契約の途中で解約を主張できる根拠があったことになります。

以上のような対策が考えられた事例ですので,すべての対処ができなくとも,最善の対処を事前にしておくべきだったと言えると思います。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり,個別の案件についての法的助言ではありません。法令・実務は変更されることがありますので,最新の情報をご確認ください。

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弁護士 菊地正登(片山法律会計事務所)/相談・案件実績 2,931件

執筆 弁護士 菊地正登(第二東京弁護士会/片山法律会計事務所)

2003年弁護士登録。英国 University of Southampton のLL.M(法学修士)コースワークで英米法・国際取引法等を学び,ロンドンの法律事務所 Hill Dickinson LLP で実務経験。英文契約書・国際取引を中心に取り扱っています。プロフィール

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