イギリス会社法(Companies Act 2006)|英国子会社の決議要件と株主の権利
この記事のポイント
- イギリス会社法では定款自治が広く認められ,日系企業もモデル定款にしたがって定款を作ることが多い
- 普通決議は過半数,特別決議は75%以上の賛成が必要で,支配には過半数,定款変更には75%が目安となる
- 5%以上の株主の総会招集請求権などの株主の権利のほか,取締役等の本人確認の義務化など最近の改正にも注意
こんな方に:イギリスに現地法人を設立し,または現地企業に出資しようとしている日本企業の方
1. イギリス会社法(Companies Act 2006)とは
イギリスの会社法に相当するものは,Companies Act 2006と呼ばれる法律です。ここでは,株主に関する内容を中心に,その概要について説明します。なお,以下はPrivate Company(非公開会社)を前提に説明しています。
本ページは2013年時点の法制を基礎としています。2025年11月18日から義務化された取締役・PSCの本人確認(Economic Crime and Corporate Transparency Act 2023)などの最近の改正については,末尾の補足をご覧ください。
2. 定款について
イギリス会社法の下でも,日本と同様,広く定款による自治が認められています。したがって,定款に定めた内容は,一定の例外を除いて,基本的にそのまま効力を有するものとして尊重されます。
もっとも,モデル定款(Model Articles)が公表されており,日系企業もこのモデル定款にしたがって定款を作成している場合が多いです。モデル定款は,英国政府の法令データベース(legislation.gov.uk)で参照することが可能です。
3. 株主総会決議の種類
イギリス会社法において,重要な決議方法については,Ordinary Resolution(普通決議)とSpecial Resolution(特別決議)があります。
| 決議の種類 | 可決の要件 | 主な決議事項 |
|---|---|---|
| Ordinary Resolution(普通決議) | 投票された議決権の過半数の賛成(挙手による決議の場合は出席株主の頭数による)(282条) | 取締役の解任(168条。ただし特別通知が必要で,書面決議によることはできません),利害関係人(例えば取締役)と会社との取引についての承認(190条)など |
| Special Resolution(特別決議) | 投票された議決権の75%以上の賛成(283条) | 定款変更(21条1項),社名変更(77条1項),減資(641条1項(a)),解散(Insolvency Act 1986の84条1項(b))など |
なお,株主総会を開催せずに書面決議(Written Resolution)による場合は,投票された議決権ではなく,議決権を有する株主の総議決権を基準として,普通決議は過半数,特別決議は75%以上の賛成が必要とされています(282条2項,283条2項)。
実務上のポイント:日本法人がイギリス現地法人を一応コントロールするには過半数,定款変更などの特別決議事項まで支配するには75%を取得する必要があることになります。
また,株主総会の定足数は,1人株主以外の場合は2人となっています(318条)。ただし,定款により別の定めを置くことが可能です。
4. その他の株主の権利
少数株主が行使できる権利として重要なものは,5%以上の株式を有する株主が,株主総会の招集を取締役に対して要求できる権利です(303条)。また,保有率を問わず,株主であれば行使できる権利として,次のようなものが挙げられます。
| 株主の権利 | 要件 | 根拠条文 |
|---|---|---|
| 株主総会の招集請求 | 5%以上の株式を有する株主 | 303条 |
| 会社の前年度の会計書類(Annual Accounts)の謄写権 | 保有率を問わない | 431条 |
| 株主名簿の閲覧・謄写権 | 保有率を問わない | 116条 |
| 株主代表訴訟 | 保有率を問わない | 260条から264条 |
5. 最近の改正(2026年9月時点の補足)
本ページの記載後,英国の会社制度には次のような改正がありました。これらの数値・制度は変更されることがありますので,最新の情報をご確認ください。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 取締役・実質的支配者(PSC)の本人確認 | Economic Crime and Corporate Transparency Act 2023により,2025年11月18日から義務化。既存会社の取締役は次回のconfirmation statementの期日までに,取締役を兼ねない既存の実質的支配者は自身の誕生月の初日から14日以内に,それぞれ本人確認を完了する必要がある。移行期間は2026年11月17日まで |
| 登録メールアドレス | 2024年3月4日から,会社は登録メールアドレスをCompanies Houseに届け出る必要がある |
| オンライン設立手数料 | Companies Houseへのオンライン設立手数料は2026年2月1日から100ポンド(2024年5月1日~2026年1月31日は50ポンド) |
| 法人税率 | 主税率25%(利益25万ポンド超),小規模利益率19%(利益5万ポンド以下) |
| VAT登録の基準額 | 年間課税売上高9万ポンド(2024年4月~) |
契約書で確認したいポイント
- ✓出資比率が,普通決議(過半数)・特別決議(75%以上)のどちらを単独で可決できる水準か
- ✓定款や株主間契約で,重要事項の決議要件や定足数を別に定める必要がないか
- ✓少数株主となる場合,総会招集請求権など株主の権利を前提とした手当てがあるか
- ✓取締役・実質的支配者の本人確認などCompanies Houseへの手続に対応できているか
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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり,個別の案件についての法的助言ではありません。法令・実務は変更されることがありますので,最新の情報をご確認ください。
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