英文契約書の相談・質問集2 FaxやPDFでも契約は有効ですか。
海外進出・海外展開をするときに必要になる英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「FaxやPDFでも契約は有効ですか。」というものがあります。
よくご質問を受けるのが,署名・サインをした契約書原本の郵送ではなく,Fax(ファックス)でやりとりしたり,スキャンしてPDFにして電子メール(Email)でやり取りした場合でも有効ですかというものです。
基本的に多くの国が,一般的類型の契約については,一定の形式を必要とせず,意思表示が合致していれば契約を有効とし,法的な拘束力が生じるという立場をとっています。
ちなみに,決まった方式や書面で合意をしないと法的な効力が生じない行為のことを「要式行為」といいます。例えば,遺言書などがこれに該当します。
通常の契約は,この要式行為には該当せず,意思表示の合致さえあれば法的な拘束力を有することになります。
そうすると,印刷した紙の原本の郵送によらずとも,当事者の権限あるものがサインして書面を交わしたことが明らかであれば,ファックスやEmailという方式で電子的に往復させても有効と考えられる場合が多いでしょう。
こうしたことを確認的に条項として規定してある英文契約書も多いです。
具体的には,ファックスやEmailなどでサインした契約書を往復させることで有効に契約が成立すると書かれています。
こうすることで,原本のやり取りでなければ意思表示の合致=契約は成立していないとの主張はほぼ退けることができるでしょう。
そのため,念のため,そのような条項を入れた上で,ファックスやEmailのやり取りで契約締結する方が安全ではあると思います。
なお,スキャンしたデータをEmailで送る際には大きく2つの方法が使われています。
1つ目は,当事者Aがまず印刷してサインをし,それをスキャンして当事者Bにメールで送ります。
当事者Bがメールでデータを受け取ったら,それを当事者Bも印刷し,今度は当事者Bもサインをします。
それを当事者Bがスキャンしメールに添付して当事者Aに送り返します。
この方法によると,当事者Aの手元には自分がサインした原本(当事者Bのサインはない)と,当事者Aと当事者Bのサインがある写し(当事者Bがスキャンして送ってきたもの)があることになります。
そして,当事者Bの手元には,当事者Aがサインした契約書の写しに自分がサインした原本があるということになります。
これでも有効に契約は成立しています。
2つ目の方法は,当事者Aと当事者Bがそれぞれ契約書を印刷してサインし,それをスキャンしてメールに添付してそれぞれ相手方に送付する方法です。
この方法ですと,当事者Aの手元には,自分がサインした契約書原本と,当事者Bのサインした契約書の写しがあることになり,当事者Bの手元には,自分がサインした契約書原本と,当事者Aのサインした契約書の写しがあることになります。
このパターンでは,当事者AとBの両方のサインがされた契約書が原本でも写しでも1通も存在していませんが,それでも契約は成立しています。
同じ契約内容の契約書に当事者AとBがそれぞれサインした事実は存在し,それも証明できるの問題ないということです。
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