Notwithstanding anything in this Agreement to the contrary(英文契約書用語の弁護士による解説)
英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Notwithstanding anything in this Agreement to the contraryがあります。
これは,英文契約書で使用される場合,通常,「本契約にこれと異なる定めがあっても」という意味で使用されます。
例えば,ある英文契約書の15条という条文で,「売主は,本条に規定されている責任以外の責任は一切負わない」などと規定されているとします。
ところが,同じ契約書の20条に,さらに,売主の責任について定めた内容が規定されていたとします。
このような場合に,この「Notwithstanding anything in this Agreement to the contrary」のような表現を入れます。
このような表現がないと,15条に,本状に規定されている以外に売主の責任はないと規定している以上,20条の責任は売主にはないと解釈するのか,15条以外にわざわざ20条を設けて売主の責任について規定しているのだから15条の内容は間違いで,20条は例外的に売主が責任を負う場面を規定したのだと解釈するのか,どちらも成り立ちうるということになってしまいます。
こうした複数の解釈の可能性を残さないように,上記の例では20条の内容が15条に優先して適用されることを明らかにするためにnotwithstanding anything in this Agreement to the contraryという表現が入れられるのです。
20条が優先適用されることをより明確にするには,20条には,「15条の規定にもかかわらず」(Notwithstanding the provisions of Article 15 hereof)などいう表現を入れた方がよいです。
ただ,他にもいろいろな条文がある中で,特定の条項だけではなく,他にも矛盾するような表現がありえたり,編集しているうちに条項番号がずれたりすることもありえます。
そうすると,上記の例では,15条以外の条項の中にも,20条の内容矛盾する可能性がある内容を含んだ条項がある可能性があるので,このような包括的な表現をあえてすることがあるのです。
こうすれば,とくにかく20条の内容が優先適用されるということになるので,矛盾することがわかりやすい15条に限らず,その他の条項もすべて20条に「負ける」ということがわかるわけです。
当然のことですが,英文契約書を作成する際には,各条項が矛盾していないか,矛盾するとすれば,どちらを優先させるのかを明確になっているかをチェックすることが重要です。
ただ,英文契約書は量が膨大になりがちで,何度チェックしても抜け落ちが起こりえます。
そのため,とにかく優先適用したい条項にはnotwithstanding anything in this Agreement to the contraryなどの表現を使うなど,工夫する必要もあるでしょう。