日本の㈱ABC販売は,ある自社製品を香港に輸出するビジネスを始めました。
輸入者となる香港の㈱XYZには,非独占の販売店(Distributor)として香港全域に商品を販売してもらおうと考え,英文で非独占の販売店契約書(Non-Exclusive Distribution Agreement)を作成し締結しました。
その際,㈱ABCの社長は,クロスボーダー取引においては,掛け売りはできるだけ避けるようにした方が良いという貿易アドバイザーの言葉を思い出し,100%前払いという条件を英文契約書に書き入れて安心していました。
そして,その契約書を基に取引が始まりました。
まず手始めに,㈱XYZは,日本円にして500万円程度のロットで,商品を発注しました。㈱ABCとしては,初回から大口の注文が入り,幸先が良いと喜んでいました。
この取引では,㈱XYZから発注がかかった段階で,㈱ABCがメーカーに商品を発注し,支払いをした上で,商品をいったん在庫として抱え,その後,㈱XYZからの着金を待って,商品を輸出するという流れで納品することになっていました。
そこで,㈱ABCの社長は,喜び勇んで,メーカーに発注し,仕入れ代金の支払いを済ませました。その後,メーカーから商品が到着し,検収を済ませました。
こうして㈱XYZから着金があれば,すぐに商品の輸出の手配ができる状況となりました。
ところが,待てど暮らせど一向に㈱XYZから着金しません。何度催促しても,お茶を濁すような返答があるばかりで支払いがされない状況が続きます。
㈱ABCの社長は,途方に暮れて,日本の顧問弁護士に次の対応について相談しに行きました。
顧問弁護士は,「支払いがなされないなら,契約を解除したほうが良いでしょう」とアドバイスをし,㈱ABCはそれに従って,契約を解除しました。
これにより,㈱ABCは,着金を待って商品を輸出する義務から免れました。
そして,仕入れてしまった商品については,他社に転売することで損失補填することを検討することになりました。
ところが・・・。この商品は,㈱XYZのかなり特殊な仕様に従ってメーカーに製造してもらったものでした。
そのため,そのままでは㈱XYZ以外の第三者への転売がかなり難しい商品だったことが判明したのです。
転売先の要望に沿って商品の仕様を変えるためにはかなりの追加コストがかかると聞きましたが,後の祭りです。
このようにして,㈱ABCは踏んだり蹴ったりの損害を被ることとなってしまったのです。
本事例の解決法
本件のような場合は,商品の発送前の全額前払いとなっているので,代金が着金しない限り,商品の発送をしなくて良いことになるので,その意味では,代金回収リスクはないことになります。
しかし,買主からの着金を待たずに,商品を仕入れる必要があり,かつ,その商品が仮に在庫化した場合に転売が難しい場合は注意が必要です。
この場合,輸入者の発注に基づき,メーカーから仕入れたものの,輸入者が代金を払わない場合に,売主は,転売できない在庫を抱えるというリスクがあります。
本件はまさにこれに当たる事例だったということになります。
このような事態を避けるためには,事前に商流を確認しておく,場合によっては,英文契約書に,代金着金後に製造の発注をする旨を明文化し,それを前提としたスケジュールで発注をするように注意喚起することなどが考えられます。
製造着手前に代金の全額を販売代理店から支払ってもらうことが難しくても,せめて製造原価に相当する分は製造着手前に払ってもらうべきでしょう。
こうすることで,もし販売代理店が後に何らかの事情で商品を必要としなくなり,残りの代金を支払わなかったとしても,製造原価分の支払いは受けているので,一応損害は回避できることになります。
国際取引では,日本国内での取引よりも債権回収が困難ですので,よりシビアに考える必要があります。
一概に対応に正解があるわけではないですが,今回の事例は注意しておいた方が良い点といえます。
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