In writing(英文契約書用語の弁護士による解説)
英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際に登場する英文契約書用語に,In writingがあります。
これは英文契約書で使用される場合,通常,「書面により」という意味で使用されます。
英文契約書では,契約解除(Termination)や,契約の更新(Renewal),請求(Claim)など多くの場面で,当事者が相手方に対して通知をすることになっています。
その際,In writingという用語を挿入しないと,原則として,書面によらない通知方法でも可となってしまいます。
その場合,例えば,契約の更新の場面で,「きちんと契約条項どおりに事前に余裕をもって更新しない旨を○月○日に電話で伝えた」,「いや,そのような事実はないな」どと,更新がなされるのかなされないのか,どちらの主張が正しいのか紛争になるリスクがあります。
そのため,何か通知をしなければならない場合には,書面により通知し,証拠を残すことを強制することがよくあります。
このことを規定したい場合によく登場するのが,In writingです。
ただ,近年は,電子メールやオンライン上での通知手段が複数登場しており,いちいち書面による意思表示をすることが煩雑になっています。
また,最近は確実性が増しているとはいえ,国際郵便では輸送距離も長くなるので,郵便の事故も起きやすいです。
そのため,in writingの書面には,電子メールを含む(including email)と明記することもよくあります。
こうしておけば,必ずしも印刷した紙の通知書を相手方に郵送しなくても,電子メールに添付したPDFなどによる通知で足りることになります。
証明力としてもこの方法で問題ないことが多いので,特に国際取引では,電子メールによる通知を有効とすることが多く見られます。
なお,通知するとしてどこの誰に通知するのかというNotices(通知)という条項もよく設けられます。
書面により通知するとしていても,通知先を規定していなかったがために,権限のないものに発送してしまったというような事態を防ぐためです。
また,Notices(通知)条項では,通知がいつの段階で効力を生じるのかについても規定することがあります。
国の法律によっては,意思表示が発信された段階でその意思表示の効力が生じるとされたり,意思表示が相手方に到達してはじめてその効力が生じるとされたりするなど,意思表示の効力発生時期が問題になることがありうるからです。
例えば,郵便ならいつの段階で相手に到達したとみなし,その段階で効力を生じるとしたり,発送してから何日後に到達したものとみなすなどと決めてしまったりすることもあります。