英文契約書の相談・質問集18 準拠法を定めておけば他の法律は適用されないですよね。
英文契約書の翻訳(英訳/和訳)・作成・チェックに関する基礎的な質問に,「準拠法を定めておけば他の法律は適用されないですよね。」というものがあります。
確かに,多くの国で,当事者の合意を尊重するとされていますので,当事者がある国の法律をその契約について適用すると合意すれば,そのとおりになる可能性が高いといえます。
しかしながら,当事者が適用される法律を選択したからといって,当事者が合意した準拠法のみが適用されるということではありません。
例えば,法律よりも上位の法源となる条約が挙げられます。
ある国の企業と外国の企業が物品の売買契約をしたという場合,加盟国であればウィーン売買条約という条約が適用されるということがあります。
これは,当事者が準拠法で例えば日本法を適用すると合意していたとしても,ウィーン売買条約は日本の法律よりも優位になるため,場合によっては,日本法ではなくウィーン売買条約が適用されるということがありえます。
もっとも,ウィーン売買条約は,当事者が合意すれば適用を排除できますので,例えば,日本法とウィーン売買条約が同一場面で異なる内容を規定していたとして,当事者が日本法を適用するとしていれば,その部分については日本法が適用されるということにはなるでしょう。
また,いわゆる強行法規/強行規定についても適用があります。
例えば,日本でいうと,独占禁止法(競争法),消費者契約法(法の適用に関する通則法第11条参照)や各種労働法(法の適用に関する通則法第12条参照)などが典型例です。
これらは,立場が強いと考えられる者と,弱いと考えられる者が契約関係などに入る場合に,弱い者を保護するという趣旨で作られていることが多いため,いくら当事者がその内容とは別の合意をしたとしても,強制的に法律が適用されることになることがあります。
したがって,日本の企業が外国の企業と取引する際,日本法を準拠法として選択したとしても,相手の国の現地法が強制的に適用されるということはありえます。
海外進出や国際取引を行う際は,これらの条約や強行法規/強行規定については,注意しておかなければなりません。
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