英文契約書の相談・質問集19 販売店と代理店の違いは何でしょうか。
英文契約書の翻訳(英訳/和訳)・作成・チェックに関する基礎的な質問に,「販売店と代理店の違いは何でしょうか。」というものがあります。
一言でいうと,販売店は,商品を自ら仕入れて買主となりますが,代理店は,商品を自ら仕入れず買主にはならないという点が最も顕著な相違点です。
販売店は英語ではDistributor(ディストリビューター)と呼ばれ,代理店はAgent(エージェント)と呼ばれています。
日本では,例えば,総代理店(販売総代理店/一手販売店)などという表現に代表されるように,本来Distributor(販売店)であるのに,代理店と呼ぶことがありますが,英語では全く異なる概念で,区別して表記されているので,ご注意下さい。
販売店契約なのか,代理店契約なのかによって,様々違いが生じます。
リスクの面でいうと,代理店の方がリスクは低いです。当然ですが,自ら商品を仕入れませんので,在庫を抱えることがありません。
また,代理店は商品を仕入れてこれを転売するという売主としての行為をしませんので,売主としての責任がなく,商品の欠陥などについて対応したり,製造物責任を負ったりすることも原則としてありません。
代理店は,あくまで商品の宣伝,販促,営業行為をするだけで,顧客が見つかった場合に,顧客を売主に引き合わせ,最終的にはサプライヤーが直接顧客に商品を販売します。
なお,代理店がサプライヤーから販売代理権を与えられていて,代理店自らサプライヤーに代わって顧客との間で商品の売買契約を締結できる場合の代理店をAgent(エージェント)と呼び,販売代理権は与えられておらず,あくまで顧客をサプライヤーに紹介できるだけの場合の代理店をSales Representative(セールスレプレゼンタティブ=セールスレップ=レップ)と呼ぶことがありますので参考にして下さい。
エージェントかレップのいずれにせよ,代理店契約の場合,契約の当事者としての責任を負うのは,あくまで売主であるサプライヤーであり,代理店ではないということになります。
代理店は紹介料としてコミッションを売上に応じて取得することで利益を得ることになります。
このように代理店ビジネスは,事業上のリスクや法的リスクが低い分,一般的には,紹介料としてのコミッションの割合はそれほど高くはありませんので,販売店よりも利益率が低くなります。
粗利率にもよりますが,販売店は自社で商品を仕入れ,自由な価格で転売しますので,自分で粗利率を設定できます(値決めはそう簡単ではありませんが)。
通常,多くの国で,独占禁止法や競争法により,上代(小売価格)はメーカーが設定することを禁じられているため,このようなことが可能になります。
その代わり,法的責任が重いということになります。自ら商品を買って転売するため,販売店には売主として欠陥品についての責任や製造物責任の問題も生じます。
また,自ら商品を仕入れますから,在庫を抱えることになります。したがって,ビジネスとしてもリスクが高くなります。
海外の会社の商品を輸入して日本で販売する場合,リスクを心配するなら代理店の方が良いでしょう。
ただ,サプライヤーの意向もありますし,利益を大きくしたいのであれば,販売店契約に向けて交渉することになります。
もちろん、途中で切り替えることもありえます。
いずれにせよ,販売店(Distributor)と代理店(Agent)は事業上も法的にも全く異なるものですので,交渉過程などで混同しないようにしなければなりません。
そして,どちらの契約にするかを決めた場合,その契約の特徴に従ってリスクヘッジをした契約書を作成することになります。
→next【英文契約書の相談・質問集20】 裁判管轄はどこの国にすれば良いのでしょうか。
英文契約書に関するサービス内容のお問合せ,見積依頼は下記からお気軽にどうぞ。
正式にご依頼頂くまで料金はかかりません。
原則として,当日,遅くとも1営業日以内(24時間以内)に折り返しご連絡させて頂いております。