Delivery date(英文契約書用語の弁護士による解説)
英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際に登場する英文契約書用語に,Delivery dateがあります。
これは,通常,英文契約書で使用されると,「引渡日,納品日」という意味を持ちます。
商品の単発の売買契約や販売店契約・基本売買契約などの継続的契約において,商品の引渡期日をどのように定めるかは重要な問題です。
英文契約書は,英米法(コモン・ロー)を基礎にして作成される場合が多いですが,このDelivery dateの英米法上の扱いには注意が必要です。
英国コモン・ローにおいては,納期を当事者が定めた場合に,売主がその納期に遅延しても,直ちに売主が損害賠償などの責任を負うとされていません。
この考え方をTime is NOT of the essence.と表現します。
和訳すると「時期(タイミング)は契約の重要な要素ではない」という意味になります。
この点は,日本と異なる考え方を取っていると理解して良いでしょう。
ことに,国際取引においては輸送の物理的距離が通常の国内取引よりも長くなりますし,海上輸送では,様々な要因で輸送の期間が予定よりも延びてしまうことがよくあります。
そのため,delivery dateという納期の法的性質をどのようなものとするのかは重要な意味をもっています。
もちろん,通常は,不可抗力事由(Force Majeure)が原因となって納期遅延が生じた場合,売主は免責されると英文契約書に定めることは多いと思います。
しかしながら,必ずしも明確な不可抗力事由が原因となって納期遅延が生じる場合だけではありませんし,不可抗力事由を立証するのが困難なケースもあります。
したがって,国際取引において,納期遅延による法的責任を生じさせるのが妥当かどうかという点がそもそも議論になりやすいのです。
このような事情があるため,売主としては,Delivery dateは,あくまで納期の目安であり,仮に納期に遅れたとしても法的責任が生じるものではないと定めたいでしょう。
他方で,買主としては,すでに受注した転売が予定されているケースなどでは,納期は必ず守ってもらわなければならず,遅延した場合は売主に損害賠償請求などができると定めたいでしょう。
このような利害関係を調整した上で,英文契約書において,delivery dateを定めることになります。
また,上記のような納期遅延により責任が生じるかどうかという杓子定規な観点だけでは足りません。
加えて,実際に納期に遅れそうな事態が生じた場合,売主と買主がそれぞれどのような対策を講じる必要があるのかについても,商品の性質などを考慮の上事前に十分に協議し,場合によって,英文契約書に記載しておく必要があるでしょう。