英文契約書の相談・質問集27 英文契約書は締結前に海外の弁護士のチェックを受けるべきですか。
英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「英文契約書は締結前に海外の弁護士のチェックを受けるべきですか。」というものがあります。
結論から申し上げると,海外の弁護士のチェックを受けたほうがより安全です。
英文契約書は,当事者双方が合意した内容を書面にしたものですが,その内容に,法律が介入して,英文契約書に記載した内容がそのまま有効にならない場合があるためです。
これは,例えば,英文契約書にどの国の法律を適用するかという問題である準拠法について,日本法を適用すると合意して定めた場合も同様です。
なぜなら,このように当事者が準拠法を合意したとしても,なお海外の現地の法律が強制的に適用されるという場合がありうるからです。
例えば,雇用契約(Employment Agreement)などがその典型例です。
日本を例に考えてみれば想像しやすいと思います。例えば,外国人を日本企業が日本において採用する際に,相手が外国人だからといって準拠法を外国法にし,日本の労働法をすべて無視して自由に労働者と合意できるということにはならない可能性があることは感覚的にも理解できるでしょう。
実際に,日本企業が雇用する相手が外国人だとして,例えばこの外国人との間で準拠法を外国法とすると合意してみても,その労働者が日本法を適用する意思を表示した場合には,日本法が強制的に適用されることがありえるのです(法の適用に関する通則法第12条参照)。
他にも,販売店契約(Distribution Agreement)や代理店契約(Agency Agreement)の契約終了時に,販売店や代理店を保護するという法律や判例が強制的に適用される場合もあります。
独占禁止法・競争法なども強制適用がある法律の例です。消費者保護の観点から,消費者保護法や,未成年を保護する法律なども強制的に適用される場合があります。
このように,いくら当事者が英文契約書で合意をしたとしても,その合意内容が強制的に修正を余儀なくされる可能性があるのです。
そのため,海外の現地弁護士に英文契約書を締結前にチェックしてもらい,上記のような問題がないかを確認することには大きな意味があります。
もっとも,取引の内容・規模,予算,スケジュールなど様々な問題で,必ずしも全件事前に海外の弁護士に英文契約書をチェックしてもらうというわけにはいかないという現実もあります。
特に,経営資源が限定的である中小企業にとっては,毎回海外の現地弁護士に見てもらうのは非現実的という面もあります。
そのため,どの程度までリスクヘッジをする必要があるのかについては,顧問弁護士などと相談し,予算や取引規模,取引の内容から想定されるリスクの大きさなどを考慮し,決定することになります。
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