英文契約書の相談・質問集30 英文契約書でMaterial breachというのはどういう意味ですか。
英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「Material breachというのはどういう意味ですか。」というものがあります。
英文契約書の中で,契約解除(Termination)の条項によく見られる用語です。
これは,和訳すると,「重大な違反」という意味ですが,和訳だけではなく中身を理解しておく必要があります。
Fundamental breachとして,fundamental(基礎的な)という用語を使用することもあります。
日本法では,契約当事者が自己の責めに帰すべき事由により債務を履行しなかったということがあると,相手方は違反を是正するように求めた上で契約を解除できるのが原則になります。
これに対し,コモン・ローでは,契約当事者に契約違反があった場合に認められる相手方の救済手段は,原則として損害賠償請求(damages)のみになります。
ちなみに,この契約違反による責任は,日本法のように責めに帰すべき事由がなくとも責任が生じます。これを厳格責任(Strict Liability)と呼んでいます。
コモン・ローでは,簡単に説明すると,例外的に解除が認められる場合は,①もしこの条項に違反すれば解除が可能であると英文契約書に書いてある場合か,または,②その違反がその契約にとって重要なものであるため,救済手段として損害賠償請求以外に解除も認められるべきと考えられる場合と理解しておけば問題ないかと思います。
解除できる場面をmaterial breachがあった場合と定めている契約書は,この英米法(コモン・ロー)の考えを反映させて,軽微な契約違反の場合は,解除ではなく損害賠償のみが救済手段となることを確認していることになります。
英文契約書においてどの場面で解除できることになるのかは,解除できる場合をすべて挙げれば最も明確化できるということにはなるかと思います。
ただし,貴社が契約のどちらの立場なのか,どういう取引なのかなどによって,必ずしも解除できる場合をすべて挙げて,それ以外は解除は認められないとすることが良いのかという問題があります。
また,違反には多くの場合程度問題がありますし,違反の態様も様々なのが現実です。
そのため,ある程度柔軟性をもたせて,あいまいさは残るものの,違反の程度の問題とし,もし問題が起きたときに解除までできるかどうか解釈の余地があるようにあえて規定することもあります。
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