英文契約書の相談・質問集31 英文契約書に登場するEquitable Reliefって何ですか。
海外進出・海外展開をするときに必要になる英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「英文契約書に登場するEquitable Reliefって何ですか。」というものがあります。
これは,和訳すると「衡平法による救済」という訳になります。
Equity(エクィティ)というのが日本語では「衡平法」と呼ばれています。
もっとも,訳しただけでは理解したことになりませんので,中身を理解することが大切です。
Equity(エクィティ)というのは法源(法律のようなものとお考え下さい。)の一つで,そのequityで認められている救済方法が,equitable relief(エクィタブル・リリーフ)ということになります。
英文契約書で基礎になっている概念は,基本的に,判例の積み重ねで成り立つ英米法のコモン・ロー(Common Law)という法律です。
細かいことは置いておいて,このコモン・ローとは別の起源・歴史を持つ法律のようなものとして認められているのがequity(衡平法)だと理解して下さい。
そして,英文契約書の基礎となっているコモン・ローでは,例えば,当事者が契約に違反したような場合の救済方法としては,損害賠償請求(Damages)というのが原則です。
そのため,英文契約書の違反内容によっては,このコモン・ロー上の救済である損害賠償請求では足りないということがありえます。
そうした場合に,場合によって,equity上の救済措置,例えば,specific performance(特定履行)や,injunctive relief(差止命令による救済)などが認められることがあります。
このことを,英文契約書で明確にする場合に,損害賠償請求に加えて,equitable reliefが受けられるとか,損害賠償請求ができるからといってequitable reliefを受ける権利を失わないなどと,規定することになります。
日本法でいうと,injunctive reliefについては,不正競争防止法上の差止請求に相当すると理解すれば良いかと思います。
そのため,準拠法を日本法とした守秘義務契約書(NDA)などでも,和文契約書同様に,equity上のinjunctive relief(日本法でいうところの差止請求に相当)を受ける権利を有するということを記載することが多いです。
このequitable reliefは,NDA(秘密保持契約書)やConfidentiality Clause(秘密保持義務条項)でよく規定されます。
というのも,秘密保持義務違反があると,違反をされた当事者は,企業秘密を不正利用されたり,第三者に漏洩されたりしたことにより,損害賠償請求では補えないような重大で回復不能な損害を受ける可能性が高いため,損害賠償請求以外に,equityその他のすべての法源が認めている救済措置が取れると定める必要性が高いのです。
こういう事情があるために,NDA(秘密保持契約書)やConfidentiality Clause(秘密保持条項)で,「違反があった場合は損害賠償請求(Damages)に限らず,衡平法による救済措置(equitable relief)を含め,その他適用法令で認められた(permitted by applicable laws)あらゆる権利を行使することができる」という趣旨の内容が記載されるのです。
したがって,このequitable relief(エクィタブル・リリーフ)という用語が登場した場合,重要なのは,それが何であるかというよりは,損害賠償請求だけではなく,あらゆる法的措置を取ることができることを確認したいが故に入れられているということを理解しておくことだと思います。
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