英文契約書の相談・質問集35 英文契約書で契約違反の是正期間はどのくらいが相当ですか。
英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「英文契約書で契約違反の是正期間はどのくらいが相当ですか。」というものがあります。
英文契約書では,一般的に,当事者が契約違反をした場合,契約違反をされた当事者は,契約を解除できると定められます。
その場合,大きく分けて,1.契約違反をしたら問答無用で直ちに相手方当事者は契約を解除できると定めるパターンと,2.契約違反をされた場合,その違反状態を是正するように求め,一定期間契約違反状態が是正されなければその時点ではじめて解除できると定める2パターンがあります。
なお,日本法でもそうですが,1.は無催告解除と呼ばれるもので,直ちに解除されるというのは解除される側に酷です(期限を失念していたなどの場合もあるので)ので,このような取り決めは法令や判例で制限を受ける可能性がありますので注意して下さい。
ここでのご相談は,2.の「一定期間」をどの程度の期間とするのが妥当なのかという内容に相当します。
結論からいうと,元も子もないようですが,ケース・バイ・ケースだということになります。
例えば,継続的な製品の売買契約であれば,その取引の規模や,支払い条件の内容,売買の製品がどういう性質のものか,どちらが契約解除の要望を強くもつのか,などによって妥当な期間は異なってきます。
上記の例で,売主の立場に立った場合,売買の対象製品が,1台数千万円もする機械類で,受注してから数十台生産し,70%の代金が検収合格後の後払いだったとします。
この場合に,売主が,約束の納期(商品の発送時期)に遅れたとします。
原因にもよりますが,大きな機械類で,慎重な陸上輸送が必要などという場合,納期に遅れて,是正を求める催告を受けてから3日後までには再度輸送を完了しないと契約を解除されてしまうというのであれば,売主にとって不利益が大きすぎるといえます。
他方で,買主の方からすれば,一定の期間内に納品が完了しなければ,自社使用ができず損害が生じたり,転売ができず売買差益が損失になるなどの事情もあるので,是正を求めてから長期間は待てません。
このバランスを見ながら取り決めるということになります。
一般論としては,日本国内の取引よりも国際取引の場合は,この是正のための相当期間というのは長くなる傾向があります。再度の義務履行が国内取引よりも困難な場合が多いからです。
私の経験では,短くても2週間程度とする例が多いように思います。
もちろん,金銭の支払債務などは,物品の輸送義務などとは異なり,是正が容易(資金繰りの問題は置いておいて)であることが一般的でしょうから,(金額にもよりますが)金銭支払債務に取引の問題の焦点があるのであれば,是正期間は短くなるでしょう。
まとめると,是正期間としてこの程度が妥当という標準期間のようなものはないので,それぞれの当事者の利害関係や,取引の性質などを考慮しつつ,自社の利益を守りつつ相手にとっても受け入れられる現実的な期間を設定するということになります。
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