英文契約書の相談・質問集38 海外の販売店が販売する上代を決めたいのですが,問題ないですよね。
英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「海外の販売店が販売する上代を決めたいのですが,問題ないですよね。」というものがあります。
これは,メーカーやサプライヤーである日本法人が自社製品を海外の販売店(Distributor)に販売展開してもらおうとする場合に,よく受ける質問です。
結論としては,上記の例で日本法人が上代を指定(命令)するのは避けたほうが良いです。
なぜなら,日本法でいうところの独占禁止法上の再販売価格指定の禁止というルールが多くの国で定められているからです。
特に先進国では,グローバル市場の中で,各国の企業がフェアに自由競争をしながらサービスや製品を売買することがグローバルな経済発展に資するという考えのもと,自由競争を促進する法律を制定していることが多いといえます。
このような考えのもとでは,上代(小売価格)をメーカー等が決定しこれを販売店に強制するというのは,市場価格をメーカーがコントロールすることを許すことになり,自由競争を阻害することにつながるため,避けなければならないと考えられています。
そのため,上代価格をメーカー等が指定することは,独占禁止法や競争法(Competition Law)という法律で禁止されていることが多いのです。
海外の市場に自社製品を販売展開する際,日本法人としては,読めない市場で有利に闘うために小売価格をある程度コントロールしたいという事情があるのはよく理解できます。
場合によってはそのような戦略が逆に販売店(Distributor)の利益確保にもつながることもあるでしょう。
ただ,法律は様々なステークホルダーの利害調整の結果として制定されていますので,局地的な判断によると問題を生じることはよくあります。
法律違反をしてしまうと,あとで大きな罰則を受けたり,多大なレピュテーションダメージを受けたりしてしまい,グローバルな損失を出してしまうということもありえます。
そのため,法律違反はしないということは最低限守りつつ,現地マーケットの特性と販売店の利益確保をも考慮し,価格戦略やマーケティング戦略を販売店(Distributor)とよく話し合って決定していくことが大切でしょう。
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