英文契約書の相談・質問集53 英文契約書で代金の支払方法はどのようなものがありますか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「英文契約書で代金の支払方法はどのようなものがありますか。」というものがあります。

 

 日本企業が海外の企業を販売店(Distributor)と指名(Distributorship Agreement)して,販売店に自社製品を販売して,現地で商品を展開していくという場面を想定します。
 

 この場合,日本企業がきちんとこのビジネスで利益を上げるためには,当たり前ですが,きちんと代金を回収することが最初の出発点になります。

 

 もちろん,他にも製品の品質管理,契約不適合責任(旧瑕疵担保責任),製造物責任,引渡し責任,解約条件,知的財産権の保護など多くのことに対処しないと利益確保は困難です。

 

 しかしながら,まず基本となるのは,この代金回収です。これができなければ,ビジネスが始まりません。

 

 そのため,代金の回収,つまりは,代金の支払方法の定めは,ことビジネス的な観点から見ると英文契約書でも最も大切な条項の一つとなります。

 

 細かく説明すると代金の支払い方法は数多くあるのですが,私が見る中で特に多い典型的なものに絞って解説します。

 

 最も多いのは,TT送金(Telegraphic Transfer)と呼ばれる銀行送金です。

 

 日本でも銀行から振込送金をしますが,海外の銀行から自社の取引口座に代金を送金してもらうという馴染み深い方法です。

 

 もう一つよく行なわれるのは,信用状(L/C Letter of Credit)決済です。こちらは,簡単にいうと銀行の支払保証付きの決済方法といえます。

 

 L/C取引は全企業ができるわけではないので,私の経験上,中小企業が新たに海外と取引をする際に選択するので数が最も多いのはTT送金です。

 

 この場合,サプライヤーである日本企業としては,いかにして代金を確保するかを考えて,英文契約書に支払条件を記載しなければなりません。

 

 よく取られるのが,商品の出荷前に全額代金を送金してもらう方法です。

 

 こうすると,代金全額の着金が確認できない限りは商品を出荷しなくて済むので,回収の安全性が高まります。

 

 ただし,特注品のようなものは,この方法でも代金確保は安全とはいえません。

 

 なぜなら,販売店から発注を受けてから契約工場に発注をかけて製造し,自社倉庫にいったん在庫にするという流れになっていると,販売店が代金を支払うまでは商品を出荷しなくて済みますが,在庫になってしまっているからです。

 

 こうなると,販売店が代金を支払わない場合,商品を転売できなければ,損失が生じるリスクがあります。

 

 したがって,この場合は,理想は製造開始前(注文時)に全額前払いを受けるということになります。

 

 ただ,いつも全額前払いというのは難しいケースもあります。そういう場合は,製造原価を考えながら,譲歩しつつ分割払いを認めるケースもあります。

 

 発注時◯割,出荷後◯割,検品後◯割などとして分割払いにします。

 

 ただ,やはり分割払いは危険がありますので,お客様によっては全件全額前払でないと受注しないという方もいらっしゃいます。

 

 重要なのは,日本のような感覚(日本でもですが)で,安易に掛売りを認めないことです。

 

 当然ですが,売掛が残ると,国内取引に比べ,国際取引では回収が非常に困難になります。

 

 裁判すれば良い,仲裁すれば良いと簡単に考えてはいけません。

 

 訴訟手続きには実効性に疑問がある場合が多いですし,そもそも多額なコストと膨大な時間を要し,経営資源の問題で選択できないこともよくあります。

 

 そのため,売掛が残るということのないように,事前に英文契約書作成段階でできるだけリスクの少ない支払条件を選択し,交渉する必要があります。

 また,支払方法だけではなく,金額についても争いが生じないようにすることが大切です。

 

 税金はどちらが負担するのか,源泉はどう考えるのか,銀行の送金手数料・着金手数料はどうするのかという点も明らかにしておくと安心です。

 

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