英文契約書の相談・質問集63 英文契約書で販売店の競合品取扱いを禁止できますか。

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英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「英文契約書で販売店の競合品取扱いを禁止できますか。」というものがあります。

日本のメーカーが海外の企業を販売店(Distributor)に指名して,自社製品を海外に販売展開するとします。

その際に,英文販売店契約書(Distribution/Distributorship Agreement)を作成しますが,日本のメーカーは,自社製品と競合する製品を販売店が取り扱ってはならないという規定を入れることはできるのかというのがこの問題です。

この問題は,独占禁止法や競争法(Competition Law)の問題と考えて良いと思います。

ここで,英文販売店契約書(Distribution/Distributorship Agreement)には,基本的に2種類存在しますので,それぞれに分けて考えた方が良いでしょう。

まず一つ目は,Exclusive Distribution/Distributorship Agreementの場合です。

こちらは,日本語では,総販売代理店契約などと呼ばれるもので,要は,海外の販売店が,独占的な販売店として指名を受けるというものです。

このExclusive Distribution/Distributorship Agreementを締結すると,契約期間中は,日本のメーカーは,販売店の販売地域(Territory)において別の販売店を指名することができなくなります。

これは,海外の販売店にとってみれば,自社以外の販売店が販売地域において指名されないという利益を得ているので,非常に強い権利をもらったということになります。

その反面,日本のメーカーとしては,販売店に努力して商品を販促して販売を増やしてもらわないと,強い権利を与えた意味が失われてしまいます。

そのため,日本のメーカーとしては,相応の制約を販売店に課して,集中して自社製品を取り扱って欲しいと考えても不思議ではありません。

そこで,メーカーがよく挿入するのが,競合品の取り扱い禁止条項(Non-Competition Clause)です。

これにより,販売店は,Distribution/Distributorship Agreementの契約期間中は,メーカーの製品と競合する製品については,販売地域で販売できないことになります。
 

このように,Exclusive Distribution/Distributorship Agreementの場合,販売店が自分の利益になる独占販売権を得ていることから,独占禁止法や競争法においても,競合品の取り扱い禁止規定は有効という方向に解釈されやすいと考えて良いかと思います。

もちろん,競合品の定義をあまりに広く取って,類似品であればおよそ取り扱いを禁じるというような内容の競合品取り扱い禁止条項であれば,問題を生じる可能性がありますが,常識的な内容であれば問題ない場合が多いかと思います。

これに対して,もう一つのNon-Exclusive Distribution/Distributorship Agreementの場合には注意が必要です。

こちらの場合は,非独占的な販売店契約になりますので,契約期間中でも,日本のメーカーは,販売地域で他の販売店を指名できることになります。

そうすると,販売店としては,同一商品で競合と同一商圏内で競争するということがありうることになります。

これにより,事業上は一概にいえませんが,一般的には,Exclusive Distribution/Distributorship Agreementの場合よりも,販売店としては利益を出しにくいということになります。

その上,競合品の取り扱いもできないとなると,アンフェア,かつ,販売店の事業が不当に逼迫するおそれもあります。

そのため,このようなNon-ExclusiveのDistribution/Distributorship Agreementの場合は,競合品の取り扱いを禁止する場合,独占禁止法や競争法上の問題を生じる可能性があります。

また,独占的販売店契約(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)であっても,契約期間中のみならず,契約終了後も競合品の取扱いを禁止する場合は,契約期間中のみの禁止の場合に比べて,独占禁止法等に違反する可能性が高まると考えて良いでしょう。

禁止目的の合理性に疑問符が付きますし,販売店(Distributor)に対する制約が強くなり,サプライヤーの市場独占傾向が高まると考えられるからです。 

さらに,契約締結時にすでに販売店(Distributor)が競合品を扱っているにもかかわらず,その競合品の取扱いまでやめさせるという場合も,独占禁止法等の法律に違反する可能性が高まるでしょう。

こちらの場合も,販売店(Distributor)に対する規制が強すぎますし,すでに扱っている商品まで取扱いを規制する合理性が疑わしいからです。

このように競合品の取扱い禁止規定は,独占禁止法等に違反する可能性があるため,このような条項を入れる場合は,日本の弁護士のみならず現地の弁護士にも確認してもらうなどの対策が必要でしょう。

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弁護士 菊地正登(片山法律会計事務所)/相談・案件実績 2,931件

執筆 弁護士 菊地正登(第二東京弁護士会/片山法律会計事務所)

2003年弁護士登録。英国 University of Southampton のLL.M(法学修士)コースワークで英米法・国際取引法等を学び,ロンドンの法律事務所 Hill Dickinson LLP で実務経験。英文契約書・国際取引を中心に取り扱っています。プロフィール

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