英文契約書の相談・質問集65 販売店契約(Distribution Agreement)は自動更新が良いですか。
英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「販売店契約(Distribution Agreement)は自動更新が良いですか。」というものがあります。
これは,日本企業がサプライヤーになる場合でも,販売店(Distributor)になる場合でも,同じことがいえますが,「状況による」というのが回答になります。
自社に有利な条件で販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を締結できるのであれば,基本的には,契約の長期化を望むと思います。
そのため,自社に有利な契約条件なのであれば,できるだけ契約期間を長くしてもらい,かつ,問題なければ契約が更新されるように自動更新条項にしておいた方が良いでしょう。
また,自社にとって契約条件が良いかどうかはともかくとして,その取引先との契約は是非とも維持して,長期的な関係を望むという場合もあると思います。
その場合も,契約期間は長くしてもらい,自動更新と定めた方が良いと思います。
反対に,例えば,日本企業が販売店側で,非独占の販売店契約(Non−Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)を締結し,競合品を取り扱ってはならない,最低購入数量の定めがあるなど自社に不利な場合は,契約期間を短くし,かつ,自動更新ではなく,期間満了による終了を前提としておいた方が良いということになるでしょう。
また,日本企業がサプライヤー側の場合も,海外企業を総販売代理店として,独占契約(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)を結ぶという場合には,販売店のパフォーマンスが不明ですから,実績を見るために,契約期間は短くし,かつ,自動更新は避けるというのが一般的だと思います。
こうして自動更新を回避することにより,契約期間満了時に改めて契約を継続したいと考えるのであれば,更新ということではなく,いったん契約を終了させた上で新たに再契約をすることになります。
逆に,契約期間満了時に,販売店(Distributor)のパフォーマンスが期待以下であったと判断するのであれば,そのまま期間満了で契約を終了させれば良いことになります。
もちろん,自動更新条項を入れていても,通常は,「◯ヶ月前までに契約を更新しない意思表示を相手方に通知すれば,期間満了により終了し,通知しない場合に自動的に更新する」という規定になっていることが多いですので,無条件に自動更新となるわけではありません。
では,なぜ自動更新にするかどうかが検討事項になるかというと,自動更新とすると,契約当事者が更新に期待を寄せることが多いということが挙げられると思います。
更新条項が入っていなければ,契約期間の満了により契約は終了するという認識が当事者にあるのが通常です。
もちろん,この場合でも,上述したとおり再契約は可能ですが,特に契約書に触れられていなければ一旦は終了するという理解でいるのが通常です。
反対に,更新を拒絶しない限り自動的に更新するというのは,お互いに取引関係を長期的に維持したいという意図があるからこそ,いちいち再契約により契約をしていくのは煩雑なので自動的に更新させようとしているのだと思います。
そのため,取引関係の長期化をお互いに期待しているという事情があることが多いのです。
このような事情の下,当事者のどちらかが期待に反して契約を更新せずに終了させようと考えて,相手方にその旨を通知するとどうなるでしょう。
相手方は,心外だとして,重大なクレームをしてくる可能性があるのです。
そのため,一見たいした違いはないように見えても,自動更新にした方が良いのか,しない方が良いのかということが検討事項になることがあるのです。
もちろん,上記のようなクレームが出されるリスクについては,自動更新条項がある場合に限らず,事前にリスクヘッジしておかなければならない問題なのですが,私の経験上,クレームが生じる可能性は,当事者が更新の期待を寄せてしまう分,自動更新の場合の方が高いといえますので,ご注意下さい。
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