英文契約書の相談・質問集67 販売店契約の最低購入数量はどう交渉すれば良いですか。
英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「販売店契約の最低購入数量はどう交渉すれば良いですか。」というものがあります。
この最低購入数量は,Minimum Purchase Quantityや,Minimum Purchase Amount(最低購入金額)などという表現で英文の販売店契約書,特に独占販売権のある販売店契約書(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)に登場します。
日本語では「ミニマム」とか「ノルマ」と呼んだりもします。
この最低購入数量は,日本企業が輸出者側に回る場合には,現実的な範囲内でそれなりに重い最低購入数量を販売店(Distributor)に課すということになるでしょう。
反対に,日本企業が販売店となり,海外のメーカーから商品を輸入して販売する場合には,この最低購入数量条項には慎重になる必要があります。
通常,最低購入数量条項が挿入された場合,1年毎や四半期ごとの商品購入ノルマが課され,これを達成できない,または,達成できない見込みが濃厚である場合には,販売店契約を解除されたり,独占販売権を奪われたりという制裁が定められます。
そのため,日本企業が販売店となる場合には,あまりに重い最低購入数量が定められることについては,慎重に交渉する必要があります。
とはいえ,独占販売権を得ている場合は,海外メーカーとしては,他に販売店を指名できないという制約を受ける以上,相当程度商品を購入してもらわないと採算が合わないという事情もあります。
このような事情から,最低購入数量条項自体を外すことは難しいかもしれませんが,特に最初の1年目,2年目などは少ないノルマにしてもらうなど,交渉は粘り強く行う必要があります。
特に,マーケットに認知されていない商品ですと,最初の1,2年は商品の導入期となり,利益が見込めないことが多くあります。
このような場合に,1,2年目から過度な最低購入数量条項が定められては,販売店は中期的な販売戦略が立てられなくなってしまいます。
このあたりを丁寧に説明して,サプライヤーの理解を得るよう努力することが大切かと思います。
他にも,法的義務として最低購入数量を定めるのではなく,法的拘束力がない予測(Non-Binding Forecast)として定めるように交渉する方法もあります。
あくまで参考値としての販売予測であれば,仮にその数値を達成できなかったとしても,契約違反としてペナルティを受けることはありません。
また,法的拘束力があるノルマとして最低購入数量/金額(Minimum Purchase Quantity/Amount)を定めるとしても,一度でも最低購入数量を達成できなかった場合に即解除になるのではなく,一定程度の猶予をもらえるように交渉することもあります。
例えば,ノルマが本来の期日までに未達でも,再度達成できるよう一定の猶予期間をもらうことや,2回達成できなくてはじめて解除ができるなどとすることが考えられます。
これらの手法は,最低購入数量の数字そのものを交渉するのではなく,法的効果に着目して販売店に不利になりすぎないようにする交渉するものといえるでしょう。
また,1年目,2年目,3年目,4年目,5年目などの節目,節目で前年度実績などを見ながら,最低購入数量を見直す規定を英文契約書に挿入することにして,最初から厳しい数字を固定で定められることを回避するという交渉方法もあります。
契約時の段階から3,4,5年目の成績を読んで適切なノルマを定めるのは至難の業ともいえるでしょう。そのため,上記のように各年度ごとに対前年比で適切なノルマを協議して定めるとするのです。
販売店契約による商品の販売展開は,利益を出すのに時間がかかるのは否めません。
そのため,最初から厳しいノルマを課されてしまうと,利益も出せず,短期間で販売店契約が終了してしまうという事態になりかねません。
したがって,日本企業が販売店となる場合は,最低購入数量は様々な観点から,事業計画上無理ない範囲内で定められるように慎重に交渉する必要があります。
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