英文契約書の相談・質問集71 並行輸入に対抗する方法はありますか。
英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「並行輸入に対抗する方法はありますか。」というものがあります。
並行輸入とは,以下のような輸入のことを指します。
例えば,海外のあるメーカーから日本企業が正規販売代理店として指名を受け,メーカーが有している商標の使用許諾も受けてメーカーの商品を日本で独占的に販売展開できるという権利(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)を得たとします。
日本企業は,総販売代理店として指名を受けていますので,海外メーカーは,日本において別の販売店を指名することはできなくなります。
つまり,日本企業としては,日本市場を自社が独占できるというメリットを受けることになります。
このような状況下,例えば,日本の別の企業がこの商品の良さを認めて,自社でも輸入販売したいと考えたとします。
この企業は,自分たちでも商品を扱いたいと考え,日本の総販売代理店ではなく,直接メーカーに問い合わせました。
しかし,先程述べたとおり,海外メーカーは,日本企業と総販売代理店契約を締結しているので,新たなこの企業を販売店に指名することはできません。
そうすると,新たに輸入販売を考える日本企業としては,直接海外メーカーから輸入できないので,別の方法を探します。
例えば,海外メーカーがフランスのメーカーだとして,このフランスのメーカーがフランス国内の卸業者に商品を卸していたとします。
新たに輸入販売をしたい日本企業は,このフランスの卸業者にコンタクトをし,ここから同じ商品を輸入し日本で販売することにしました。
これが,いわゆる並行輸入の問題です。日本の総販売代理店とすれば,日本で独占的に販売する権利を得たにも関わらず,他社に市場の一部を奪われる結果となっています。
他方で,フランスのメーカーとしては,日本企業を新たな販売店としてそこに商品を卸しているわけではないので,契約違反もありません。
総販売代理店としては,このような状況に取れる対策はあるのでしょうか。
そもそも,このような並行輸入は,法律で禁止されている国もあるようです。ただ,日本では偽物ではなく真正品であれば,下記要件の下,輸入することは禁止されていません。
①輸入商品に付された商標が,輸入元の国における商標権者等によって適法に付されたものであること(商品の真正商品性)
②輸入元の国の商標権者と日本の商標権者とが同一,または法律的・経済的に同一人と言える関係があること(内外権利者の同一性)
③輸入商品と日本の真正商品との品質に実質的な差異がないこと(品質の実質的同一性)
そのため,新たな日本企業の輸入は,メーカーの契約違反でもなく,法律違反でもないということになってしまいます。
このように,並行輸入に対する正攻法としての対策はないというのが現実です。
基本的には,上記の例のように日本に流れてきている別の商流がわかっているなら,海外メーカーに働きかけて,フランスの卸業者に対して何らかの措置を取ってもらうなどが考えられます。
例えば,フランスの卸業者も一定地域内での商品販売が許されているだけで,日本企業への販売は禁止されているということであれば,メーカーから契約違反をフランスの卸業者に対して主張してもらうなどの対策が一応考えられます。
しかしながら,日本の独占禁止法上,下記の場合は独占禁止法違反になるとされていますので,注意が必要です。
1.「並行輸入業者が供給業者の海外における取引先に購入申込みをした場合に、当該取引先に対し、並行輸入業者への販売を中止するようにさせること」
2.「並行輸入品の製品番号等によりその入手経路を探知し、これを供給業者又はその海外における取引先に通知する等の方法により、当該取引先に対し、並行輸入業者への販売を中止するようにさせること」
また,今はインターネット販売もあるため,商流が複雑です。そのため,並行輸入品はそもそもどのように流れているのかわからないということも多いですし,わかったところで,どんどんと次の並行輸入品が現れて撲滅できないということもよくあります。
このように,並行輸入品の問題は,簡単に輸入者が違法なので輸入を差し止めるなどと簡単にはいきませんので,あらゆる対策を検討する必要があります。
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