英文契約書の相談・質問集72 最恵価格(最恵国待遇)というのは何ですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「最恵価格(最恵国待遇)とは何ですか。」というものがあります。

 

 英文契約書の販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)などによく登場する考え方です。

 

 英語では,Most Favored Status,Most Favored Customer (Nation)などと表現されます。

 

 例えば,日本企業Aが,海外のメーカーから販売店の指名を受け,日本国内で海外のメーカーの商品を販売展開していく場面を考えてみます。

 

 この海外のメーカーは,日本企業Aだけではなく,他の日本企業も販売店として指名していたとします。

 

 つまり,販売店契約は独占契約ではなく非独占のNon-Exclusive Distribution/Distributorship Agreementだったとします。

 

 日本企業Aは,海外メーカーの卸値で商品を仕入れ,自社で小売価格を設定し,日本で販売展開をして利益を得ます。

 

 ところが,海外メーカーが,販売店によって卸値を変えていたらどうでしょうか。

 

 もし日本企業Aよりも安い価格で他の販売店に商品が卸されているということになると,安く仕入れられている販売店は,小売価格を日本企業Aよりも低く設定してくるかもしれません。

 

 そうなると,日本企業Aは,価格において競争力を失います。これを避けるため,値下げに追従すると,粗利が減ってしまいます。

 

 卸値が一定でないのは,取引量や販売店との力関係などいろいろな要素がありますので,実際には上記のように単純ではないですが,理解のために事例を単純化すると上記のようになります。

 

 このようなアンフェアな状態を避けるために,英文契約書に登場するのが最恵価格(最恵国待遇)という考え方です。

 

 販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)などで,「メーカーが販売店に対して設定する卸値は,他の販売店に対するものと同じかそれより低い金額としなければならない」というような趣旨が定められているのが,この最恵価格条項になります。

 

 巨大な卸や小売がこのような待遇をあらゆるメーカーに求めるなどとなると,公正な競争が阻害されるとして,独占禁止法や競争法上の問題を生じる可能性も考えられます。

 

 中小企業における一般的な取引においては,よく見られる条項です。

 

 卸価格を一定にし,あとは卸業者や小売店の競争により末端価格が決まるということになっていれば,一般的には大きな問題とならないと考えられます。

 

 他方,メーカーとしては,様々な要素から,販売店によって卸価格や支払方法の条件を変えて,販売努力のインセンティブにしたいという事情もあるでしょうから,このような定めが簡単になされるというわけではありません。

 

 規模が大きい卸や小売と契約するときには,メーカーが注意しなければならない条件の一つともいえます。

 

 なお,このようなMost Favored Status Clause,Most Favored Customer (Nation) Clause(最恵国待遇条項)に違反した場合,どのような効果が生じるでしょうか。 

 

 もちろん,契約書に記載されているとおりの効果が生じるのが原則ですが,一般的には,これらの条項の違反があった場合は,違反された当事者は,違反した当事者に対し,損害賠償請求(Damages)や契約解除(Termination)を主張できるということになります。

 

 また,損害賠償請求(Damages)や契約解除(Termination)にとどまらず,もし最恵国待遇条項に違反する事実が判明した場合,「違反したときから価格は自動的に最恵国価格に変更されていたものとみなす」という規定を契約書に入れることもあります。

 

 このようにしておけば,売主が最恵国価格条項に違反したとしても,過去・現在・将来にわたり自動的に価格調整がなされ,理論上は,違反の事実を無効化できるということにはなります。 

 

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