英文契約書の相談・質問集74 英文契約書に中途解約条項を入れるべきですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「英文契約書に中途解約条項を入れるべきですか。」というものがあります。

 

 中途解約条項とは,without cause clauseといって,特に理由がなくとも,契約期間中にいつでも契約を解約できる権利を定めた条項のことをいいます。

 

 反対に,with causeの解約条項というのは,理由があるもの,通常,日本でいうところの債務不履行解除などを想定しています。

 

 相手方当事者が契約に違反したという合理的な理由があるので,契約を途中で解除するというものです。

 

 他方で,without causeの無理由解除は,このような相手方に責められるべき事情がない場合でも,一方当事者の都合でいつでも(at any time)契約を解約できるというものなので,かなり解約する側に有利になります。

 

 契約書を,自社にだけこのような無理由解除権を認めるという内容にできれば,自社に有利になりますので,特段の問題はないかと思います。

 

 問題は,両当事者に認められたり,相手方当事者にのみ認められたりする場合です。

 

 この場合,自社は何も責められるべきことをしていないにもかかわらず,突如,契約を途中で終了させられるという事態がありえます。

 

 例えば,日本企業がメーカーから商品を輸入販売している場合で,経営上その売上比率がかなり高いような場合,突然契約終了を言い渡されれば,その損害の大きさは容易に想像できます。

 

 そのため,自社に不利となる中途解約条項がある場合,慎重な検討を要します。

 

 中途解約条項の削除要求ができれば,それが最も良いということも多いですが,相手方が簡単に削除してくれない場合も多いです。

 

 その場合は,契約終了までの猶予期間をなるべく長くしてもらうのがわかりやすい対策ではあります。

 

 いつでも解約できるとはいえ,解約の意思表示がいつでもできるという意味であり,実際には,解約するという意思表示の通知がされてから,一定期間の経過をもって終了すると定められることがほとんどです。

 

 当事者の一方が解約の意思表示をしさえすれば,すぐに契約が終了するというのは,他方の当事者の地位があまりにも不利・不安定になりますので,そのような条項は無効になるおそれがあります。

 

 そのため,通常は,終了の効果が発生するまで一定期間の猶予が設けられています。

 

 この期間が長いほど,普通は,中途解約される側にとって有利です。

 

 先ほどの例でいえば,日本企業は,契約終了までの猶予期間中に,別のメーカーとの取引を交渉したり,店舗の閉鎖を行ったり,在庫を処分したり,契約終了に備え事業形態の変更をすることができるからです。

 

 もっとも,自社に責められるべき理由もないのに,契約期間途中に解約されるというのはやはり不利益ではありますので,この点は安易に受け入れず,粘り強く交渉しなければなりません。

 

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