英文契約書の相談・質問集75 As is(現状有姿)での売買とは何ですか。
英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「As is(現状有姿)での売買とは何ですか。」というものがあります。
As is(as is basisなどともいいます。)というのは,和訳すると「現状有姿」ということになります。
例えば,売買契約において,売主が買主に商品を売る場合,通常は品質保証や契約不適合責任(旧瑕疵担保責任)などを売主が買主に対して負っていると思います。
これらの売主の責任を免除して,今ある状態でそのまま商品を引き渡せばそれで足りるというのがas isでの売買,現状有姿での売買ということになります。
中古品の売買が典型例です。中古品は一度以上別の人に買われ使用されていますし,販売されて引き渡されてからどのくらいの期間が経ったかもわからない場合があります。
そのため,中古品を販売する売主としては,買主が後で商品に不具合があったなどとクレームを入れてきても,中古品なのだから仕方がないと言いたいのが通常でしょう。
このような場合に,英文売買契約書(Sales Agreement)に,この商品はas isで引き渡され,売主は,商品の品質などについて一切の責任を負わないと記載されるのです。
他にもよく見られるのは,ソフトウェアの導入・販売の契約書です。
例えば,A社が自社の内部で販売管理に使うソフトウェアを新しくしたいと考え,B社が提供しているソフトウェアを導入して使おうとB社と契約を締結したとします。
B社としては,ソフトウェアの動作については何度もチェックし,実際に販売もしておりこれまでに不具合は生じていなことを確認しています。
しかし,このような契約において,B社が,ソフトウェアが正確にいつも動作する保証などをA社に与えることは難しいのが通常です。
動作環境は会社によって様々ですし,いくらこれまで大丈夫だったとしても,B社のソフトウェアに何らかのエラーがあることも否定できません。
そして,万一ソフトウェアにエラーなどが含まれていた場合,これによりA社に与える損害は膨大になる可能性があります。
A社の取引先との取引が失注した,過去の顧客データが消失した,他のソフトウェアまでダウンしたなどとなれば,損害額はかなりの額になります。
そのため,B社としては,ソフトウェアの動作は十分確認しているが,導入についてはas isで行い,エラーなどがない,正確に動作するなどの保証は一切できないとして契約するのが普通だということになります。
なお,単にas isで引き渡すと書いても,どこまでが免責になるのかが不明確となる場合があるので,具体的に何が免責になるのかを英文売買契約書に記載すべきです。
以上のとおり,as isでの引渡しは売主に相当有利であり,買主は何かあってもすべて自己責任ということになります。
そのため,商品は補修ができるのか,アフターサービスを有償で受けられるのか,パーツなどは変えられるのかなど,商品を買った後に不具合があっても自己責任で対応ができる状況を作ってから取引しなければなりません。
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