Protect(英文契約書用語の弁護士による解説)
英文契約書を作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Protectがあります。
これは,英文契約書で使用される場合,通常,「保護する」という意味で使用されます。
ただ,和訳しても英文契約書における実質的な意味を理解したことにはなりませんので,中身を理解する必要があります。
このprotectが英文契約書で使用されるときは,いわゆる補償条項(Indemnification/Indemnity Clause)という条項で使われることが多いです。
例えば,Seller shall indemnify, defend, protect and hold harmless Buyer from/against...(売主は,...から買主を補償し,防御し,保護し,損害を与えないものとする)などとして,英文契約書では使用されます。
この用語が使われると,上記の例では,売主が買主に損害を与えた場合,その損害を補償したり,場合によっては,買主が第三者に訴えられたりしたような場合に,売主が買主に代わって訴訟対応をしなければならないなどと解釈されることがあります。
したがって,補償する側にとってはかなり大きな負担となりうる英文契約書用語といえます。
なお,Indmnification/Indemnity Clause(補償条項)は,日本でいうところの損害賠償請求の条項とは似て非なるものです。
日本の損害賠償条項は,契約の当事者が相手方に自己の責めに帰すべき事由により損害を与えた場合に,その損害を賠償するという内容です。
これに対し,Indemnification/Indemnity Clauseは,基本的には,補償を受ける当事者が被った全損害を補償する当事者が代わりに全部引き受けるというような意味合いです。
補償を受ける当事者は,何も自己負担することはなく,訴訟費用なども回復され,場合によっては補償する当事者に代わりに訴訟を行ってもらい,第三者に賠償しなければならなくなった場合その賠償金も補償する側に負担してもらうというような意味です。
また,補償の範囲も広い傾向にあり,契約当事者だけではなく,関連会社や従業員,取引先まで補償の範囲にされることもあります。
さらに,コモン・ローの考えでは,契約責任は日本のような帰責事由を必要としない無過失責任(厳格責任・Strict Liability)ですので,補償する側に過失がなくとも上記責任が生じえます。
このように,日本法の考えとは異なるものですので,安易に日本の民法上の損害賠償義務のように考えて解釈することがないようにしなければなりません。