Cut-off date(英文契約書用語の弁護士による解説)
英文契約書を作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Cut-off dateがあります。
これは,英文契約書で登場する場合,通常,「ある権利がその日に失効し,その日以降は権利行使できなくなる」ということを表すときに使用されます。
Cut-off(カットオフ)ということで,文字どおり権利を切ってしまうというような意味合いです。
英文契約書では,様々な権利と義務が当事者に課されます。
ただ,その権利が発生したときに,いつまででもその権利が行使できるとなると,その権利に対応する義務を負っている相手方は,いつその権利に対応する義務を行わなければならないのかわからず,不安定な地位に立たされることがあります。
そのため,権利が一度発生しても,一定期間を経過し,ある期日を迎えた場合には,もはやそれ以降権利は失効し,相手方に対し請求ができないと契約書に定めることがあります。
このように権利が行使できなくなるという内容は,lapse(消滅する)などという英文契約書用語で表現されることもあります。
なお,このcut-off date条項を定める際には,消滅する日の基準をどこに設けるかを明確にする必要があります。
つまり,権利には,①発生するという時点と,それを当事者が相手方に②行使するという時点の2つの時点が考えられます。
そのため,権利消滅の日は,①の話をしているのか,つまり,その日以降に発生した権利がすべて消滅するのか,それとも,②の話をしているのか,つまり,その日以前に権利は発生していたとしても,その日以降に権利を行使した場合には請求ができなくなるという意味なのかを明らかにしておく必要があるということです。
もちろん,二段階で定めることもあります。①ある日までに権利が発生するものの,さらに②その権利をある日までに権利を行使しなければ権利は消滅するという定め方です。
いずれにせよ,cut-off(権利消滅)について英文契約書に記載するときは,何の権利がどのような条件(権利の発生なのか権利行使なのか)で消滅するのかを明確にして定める必要があります。
また,権利消滅条項が定められた場合,権利行使する側は,その内容を把握し,権利行使の意思があるのであれば,忘れることなく要件に従って権利行使をしなければなりません。
うっかり忘れていると,もはや重要な権利が行使できないという事態になってしまいますので,権利行使期限はきちんと管理するようにしましょう。
他方で,義務を負っている側の当事者は,権利行使期限をすぎるのを待っているというのはあまり良策とは言えませんので,発生した権利は行使を受ける前提で対応を事前に決めておくことが大切です。
そして,もし権利行使期限が過ぎたら,一応権利行使はされないものとして以後は管理して良いかと思います。
「一応」と書いたのは,何らかの理由で,権利行使期限を過ぎていても訴訟提起などをされることがありうるからです。
そのような場合に反論ができるように関連文書や証拠資料を保管しておかなければならないことは言うまでもありません。