Might(英文契約書用語の弁護士による解説)
英文契約書を作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Mightがあります。
これは,mayに比べれば頻出するという用語ではないですが,mayと区別して理解しておいた方が良い英文契約書用語であるといえます。
Mayは裁量(discretion)を表すとされ,may...で,「...してもしなくとも良い」という意味を表すとされています。
そのため,厳密には権利を表すときにはmayではなく,is entitled to...とすべきだという論者もいますが,英文契約実務では,mayは権利(「…することができる」)を表す用語としてよく用いられています。
ただ,mayは多義語ですので,この他にも様々な意味を持っています。
したがって,同一の英文契約書内で,いろいろな意味でこのmayを使用すると,意味の把握に混乱を生じ,場合によって英文契約書の解釈に疑義を生じる可能性があります。
そのため,mayについては,同一の英文契約書で,複数の意味を持たせて使用するのは避けたほうが無難です。
統一的に,mayを使用した場合はあくまで権利や裁量を表すとして使用すれば,基本的に混乱は生じませんので,私の経験上もmayの使用により大きな問題を引き起こすことはないかと思います。
海外の判例でmayの意味について争われたりしている事例もありますし,判例には学ぶべき点も多いですが,判例はあくまで例外中の例外のようなもの,紛争が自主的に解決できないくらいに揉めたものという理解も必要です。
したがって,英文契約書では,文言に敏感であるべきで,慎重に検討すべきですが,他方で,あまりに慎重になりすぎて,作成に多大な時間と費用を要し,こちらに一事が万事有利となってしまうと,失注することもありえ,そうなると本末転倒です。
そのため,学術的なきめ細かさと実務の現場のスピード感覚をうまく両立させる必要があります。
話がそれましたが,mightが使用されている場合は,上記の多義的なmayを使うことを避けたいがために使われている場合が多いといえます。
通常は,「…かもしれない」という意味で仮定的用法を意識して使用されるようです。
あまり,英文契約書において「…かもしれない」という意味でmayやmightを使用するという場面は多くないかもしれません。
ただ,mayが多義的なために,使用には注意が必要で,なるべく多義的には用いないという原則が働くため,他の意味である「かもしれない」という意味で使用する際には,mayではなくmightが用いられる傾向にあるという理解はしておいた方が良いと思います。
このように,ある用語の使用を避けたいがために別の用語を使用するということは英文契約書ではよくあります。