英文契約書の相談・質問集99 商品の納期を決めておけば,遅れたら売主に責任がありますよね。
英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「商品の納期を決めておけば,遅れたら売主に責任がありますよね。」というものがあります。
買主が売主から商品を購入する場合,納期を定めることが普通だと思います。
例えば,買主が購入した商品の売り先が決まっていて,その取引先が納期を指定しているという場合,納期までに商品が届かなければ,場合によって,取引先から注文を取り消されてしまうということがありえます。
そうすると,買主としては,予定していた転売差益が得られず,損害を被ってしまうことになります。発注金額が大きければときに大損害ということになりえます。
このような場合に,買主は売主に対して損害賠償請求等ができるのでしょうか。
それは,国の法律によって異なるということになります。納期を定めた以上,それを守らなければ損害賠償等の責任を負うとされていることもありますし,納期を約束しただけでは,たとえ納期に遅れても,責任は直ちには生じないとされていることもあります。
そのため,買主としては,単に納期を定めたから安心ということではなく,もし売主が納期に遅れた場合,どのような責任が生じるかを英文契約書で事前に定めておくべきということになります。
国際取引では,商品の引き渡しに関してインコターズ(Incoterms)(国際商業会議所(ICC)が制定した貿易取引条件とその解釈に関する国際規則)で取り決めることが通常かと思います。
そして,インコタームズで定めた貿易条件での引き渡し場所に,納期までに届けられなければどのような効果が生じるのかを売主と話し合って明確化しておかないと,後で重大なトラブルになる可能性があります。
通常,納期に遅れた場合の効果としては,契約を解除できるとか,損害賠償請求をできるなどと決められることになるでしょう。
ただ,国際取引・海外取引では,輸送距離が長いこともあり,納期に遅れた場合に,売主に責任を生じるという規定が入れにくいという特徴があります。
売主は,なるべくこのような責任を負いたくないという事情があり,それには一定の合理性があると考えられるためです。
そのため,納期はあくまで目安であって,納期遅延があっても,売主は一切責任を負わないと書かれている契約書も多いです。
仮に売主は納期遅延について免責されるとの規定がなくとも,通常は,英文契約書に,「不可抗力によって売主が債務を履行できない場合には,免責される」と定められていると思います。
これを不可抗力免責条項(Force Majeure Clause)(フォース・マジュール条項)といいます。
そのため,仮に売主が納期までに商品を納品できなくても,その原因が不可抗力にあるのであれば,そもそも上記の不可抗力免責の条項により,売主は免責されることが多いといえます。
したがって,売主の責任が問題になる場面というのは,多くの場合,売主が自己の責に帰すべき何らかの事情で納期までに商品を納品できなかった場合といえるでしょう。
この場合には,売主が何も責任を負わないのもバランスが悪いようにも思えます。
このように,売主側の事情で,商品を納期までに納品できなかったときに,売主にどう責任を取らせるのか,このバランシングが重要になります。
例えば,「売主は輸出港までの商品の輸送は一定の日までに行うことは約束し,これに遅延すれば損害賠償や契約解除の責任を負うが,その後買主への引渡し日についてはただの予測に過ぎず,納期までの到着を保証するものではない」などと定めることが考えられます。
なお,売主が納期遅延の場合に責任を負うとしても,いわゆる転売差益などは,結果損害(Consequential Loss)・間接損害(Indirect Loss)(日本法では特別損害などと呼ばれます)などに含まれるものとして,免責され,売主は賠償する必要はないと定められることも多いです。
また,納品が1日遅れることに一定の金額を賠償金として払わなければならないという損害賠償の予定(Liquidated Damages)条項を入れることもよくあります。
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