英文契約書の相談・質問集101 海外取引の交渉に向いているのはどういう人材ですか。
英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「海外取引の交渉に向いているのはどういう人材ですか。」というものがあります。
もちろん,一概に言えませんし,完全に主観ですが,私がいろいろなクライアント企業の経営者の方や担当者の方を見ていて,こういう人材が一般的には海外企業との取引交渉に向いていると感じるという人物像は一応あります。
単純化していうと,①タフさ(粘り強さ)と,②大所高所から物事を見ることができるバランス感覚を持ち,③リスクテイキングができる人材といえると思います。
逆に,細かく繊細な性格で,あれこれと気になってしまい,細かいリスクなどによく気がつくが,なかなか決断できない,「これでよしとしよう」という判断がなかなかできない人材は交渉向きではないかもしれません。
後者の性質を持っている人材は,バックオフィスで,法務担当などの方が向いているかもしれません。
ただ,法務が現場の交渉担当の営業などにあまり細かい視点でブレーキをかけてしまうと,失注してしまうこともあります。
そのため,大局的な視点が常に必要であることは事実で,要するに,優先順位をつけることが大切です。
「これは譲れないから絶対に獲得するが,そのかわり,これとこれは譲歩しても構わないので,タイミングを見て,そのカードを切る」という大きな視点での判断ができることが大切です。
これを実現するには,細部にわたり検討できる細かい性質の人材と,大きな決断ができ,優先順位に従って最終的に決断してリスクを取れる人材が協力して対応するということが最も良い方法かもしれません。
この場合,交渉の矢面に立つのは,後者の方であるべきといえるでしょう。
細かいと思われる項目やリスクに目が行き過ぎると,なぜあれもこれもこちらの要求が認められないのかと,時に感情的になってしまい,大きな利益を見失ってしまうことがあります。
逆に,リスクは細部まで見えていないと,優先順位をつけることもできませんし,意思決定のプロセスからリスク分析が抜け落ちてしまう可能性があります。そのため,両者の協力関係が必要となってきます。
そして,最終的には,やはり,取引・交渉の根本的な目的,大きな問題,今回の取引に関わるリスクなどに集中して目を向け,それ以外のところは目をつむって受け入れるという視点も交渉では大切になってきます。
また,多少リスクが大きいと感じられるものであっても,現実的に生じる可能性が極めて低いというような場合は,あまりその内容の改善にこだわっても,利益が少ないということもあります。
このような大所高所から物事を見られるということが,決裁権者には大事な資質となってくると思います。
とりわけ中小企業では,かなりのスピードで交渉し,意思決定をしなければならない場面が多くあります。
したがって,適正な人材配置が非常に大きな意味を持ってくるといえます。
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