英文契約書の相談・質問集104 製品自体に欠陥がなければ製造物責任は生じませんよね。
英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「製品自体に欠陥がなければ製造物責任は生じませんよね。」というものがあります。
製造物責任(Product Liability/PL)とは,簡単にいうと,製品に欠陥(defect)があり,その欠陥により人が怪我をしたり,死亡したり,物が壊れたりした場合の損害を賠償しなければならないなどの責任をいいます。
製造物責任は,いわゆる「無過失責任」ですので,製造者に過失がなくとも,製造物責任は生じます。
では,製品そのものに欠陥がなければ,製造物責任は生じないのでしょうか。
そんなことはありません。
というのは,製品そのものに欠陥がなくとも,その製品が,使用方法を誤ると人が怪我したりする危険性がある場合には,その旨を警告などしておかないと製造物責任を生じる可能性があります。
その製品の効用を得るためには,危険が不可避である場合,その危険があることを警告したり,注意喚起したりしなければ,それをもって欠陥製品であるということになるという考えからです。
そのため,製品を使用する際には一定の用法や方法を守って使用しないと危険が及ぶというときには,必ず使用上の注意と製品の危険性を警告し,マニュアルを準備することが必要になります。
この表示などが不十分であるがゆえに,その製品を使用して人が怪我をしたり,亡くなったりした場合,製造物責任の問題を生じることがあります。
例え製品自体には欠陥がなく,何の問題がなかったとしても,危険な製品についてその危険性が告知されていなければ,その危険性の告知の欠如という欠陥により損害を生じさせたという理解がされるためです。
化学製品,こどもが使う玩具,工業製品,医療機器などは,取扱いに注意を要する場合が多いので,マニュアル作成などに特に注意が必要でしょう。
もちろん,ユーザーの不正使用(misuse)については,製造物責任は生じません。
製品そのものに欠陥はなく,使用方法や製品の危険性についても十分に告知がなされているにもかかわらず,ユーザーがマニュアルに違反して独自の使用方法により製品を利用したり,禁止されている方法で製品を利用したりして,怪我をしたとしても,それは,製品の欠陥により生じたものではありませんから,製造者等が責任を負うことはありません。
このように,製造物責任というのは,製品それ自体に欠陥がある場合だけではなく,製品の効用に危険性が付随しているような場合は,その危険性にも適切な対処をしていないと,責任が生じるおそれがあるものであることに注意が必要です。
これは,製品は,製品自体に価値があるわけではなく,その製品を利用して得られる効果に価値があるのであるから,ユーザーが問題なく利用できるようにすることまでが欠陥のない製品を作るということの意味であると理解すれば,受け入れやすい考え方かもしれません。
なお,日本の製造物責任法では,メーカーだけではなく,製品の輸入者(importer)も責任を負うとされています。
そのため,日本企業が販売代理店などになり,海外のメーカーから商品を仕入れて日本国内でメーカーの製品を販売展開しているケースでも,日本企業が輸入者として製造物責任を負う可能性がありますので,ご注意下さい。
このような場合は,リスクヘッジのために,日本の販売代理店も自らPL保険(生産物賠償責任保険)に加入しておくべきでしょう。
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