英文契約書の相談・質問集108 仲裁条項があるのに裁判をするとどうなるのですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「仲裁条項があるのに裁判をするとどうなるのですか。」というものがあります。

 

 仲裁条項は,Dispute Resolution(紛争解決)Arbitration(仲裁)というタイトルで,英文契約書に挿入されることが多い条項です。

 

 これは,仲裁合意といわれ,基本的に,契約を巡って紛争が生じた場合には,裁判ではなく,仲裁手続によって解決するという当事者の合意を指します。

 

 仲裁の特徴は,いろいろあるのですが,よくいわれるのが,①仲裁人が選べる,②非公開の手続きである,③上訴権がない,④強制執行が容易であるという点です。

 

 こうしたことを考慮して,特に国際取引では,紛争解決手段として裁判ではなく,仲裁を選択することが多いです。

 

 では,この仲裁合意が契約書に存在しているにもかかわらず,裁判を起こすことはできるのでしょうか。

 

 基本的に,その国の仲裁法や,ニュ−ヨーク条約に加盟している国であればニューヨーク条約によって,訴えられた被告は,「妨訴抗弁」を出せば,裁判所は当該訴えを却下して,紛争は仲裁手続に付されることになります。

 

 要するに,訴えられた当事者が,裁判において,「仲裁合意をしているので,裁判はできない」ということを,契約書を証拠として提出して主張すれば,原則として訴訟は退けられるということです。

 

 ただ,国によっては,仲裁合意があっても,法律などで自国の裁判所での訴訟係属を認めるとしている国もあります。

 

 そのため,絶対に訴訟を避けられるということではないので注意が必要です。

 

 ただし,基本的には,ニューヨーク条約加盟国であれば,ニューヨーク条約に明文がありますので,特別な事情がない限りは,訴訟は退けられると考えて良いかと思います。

 

 また,もう一つの例外が,裁判所に申し立てる差止請求です。

 

 英語では,injunctive reliefという用語でよく登場します。これは,例えば,守秘義務違反を当事者がした場合,損害賠償請求(damages)以外の救済手段として,秘密情報の使用を差し止める請求を裁判所に提起する必要があることがあります。

 

 そのため,このような差止請求(injunctive relief)が管轄裁判所に対して提起できると英文契約書にはよく書かれています。

 

 これを根拠に差止請求を裁判所に申し立てた場合には,これは仲裁合意の例外に該当する場合がほとんどでしょうから,この場合は,裁判所も仲裁合意があるからといって請求を却下するということは原則としてないと考えられます。

 

 このように,仲裁合意と裁判というのは原則的には択一的な「トレードオフ」の関係にあるということを覚えておかれると良いかと思います。

 

 また,仲裁手続きは,どの国のどの機関で行うのか,強制執行が容易であるか(ニューヨーク条約加盟国なのかなど),相手国の法律や判例によって,仲裁条項が無効とならないかなどを事前に十分に知った上で,ベストな選択をしなければなりません。

 

 このような観点からは,仲裁地を日本にするということが必ずしもいつも有利ということではないので,その点に留意する必要があります。

 

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