英文契約書の相談・質問集110 相手方の署名者に署名権限があるのか確認すべきですか。
英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「相手方の署名者に署名権限があるのか確認すべきですか。」というものがあります。
当然ですが,英文契約書を取り交わす際,その英文契約書が効力を有するものとなるためには,その内容を発効させる権限を持つ者同士が契約書にサインしなければなりません。
そのためには,英文契約書にサインする相手方の当事者にその契約に署名する権限が与えられているのか否かは重要な問題です。
日本では,代表取締役社長(President)の権限が非常に広いので,代表取締役社長がサインする契約であれば通常問題ないことになります。
日本の社長に相当する者は,アメリカではPresident,イギリスではManaging Directorと呼ばれています。また,最高経営責任者(CEO)というポジションもあります。
これらの場合は,通常は,署名権限があると思われるので,大きな問題はないかと思います。
これら以外の者がサインする場合(もちろん,上記の肩書の場合も,その取引についての制限がないか,取締役会決議が必要なのに欠いていないかなどの問題はあります。),特に署名権限の有無に注意が必要でしょう。
署名権限があるかどうかの確認方法としては,署名者が本当に名乗っている肩書を有しているかを日本の会社登記簿謄本に相当する書類で確認したり,署名者に代理権があるかを委任状(Power of Attorney(POA))を提出してもらい権限する方法が挙げられます。
また,取締役会議事録を要求すべき場合もあります。取引金額が大きかったり,M&Aなどの重要な取引の場合,取引の実行には取締役会の承認が要求されていることがありますので,その確認を行うべき場合もあります。
もし,本来その英文契約書にサインする権限がないような者が会社を代理してサインした場合,日本の表見代理のような制度が,準拠法として選択されている国の法律にもあれば,一応救済される余地はあります。
ただ,その場合でも,サインした者に代理権・代表権があると信じるについて正当な理由があったかが重要な意味を持つことがあります。
そのため,署名権限が問題になりそうな場合には,上記の書類を確認して,署名権限を確認すべきといえるでしょう。
サインした当事者に代理権・代表権がなかったために,英文契約書の効力の有無が問題になるということは,そうめったにあることではありませんが,取引の根幹部分に関わる重要な問題ですので,そこで問題を抱えないようにする必要はあります。
中には,英文契約書では,「売主は,買主が別途指定する銀行口座に振り込む方法で代金を支払うなどと書いてあり,その後銀行口座を伝えられたが,その口座は,正式な取引口座ではなく,サインした者が「横領」できる口座だったということもありえます。
こうしたことを防止するためにも,署名者が真実会社を代理する権利があるのか,代理権・代表権を確認することは意義が大きい場合があるのです。
もちろん,署名までに時間がなく,このような書類を要求している場合ではないということもあるとは思いますが,問題がありそうな場合は,きちんと対処されることをお勧めしています。
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