英文契約書の相談・質問集111 販売店契約で売主は自由に卸値を決められるのですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「販売店契約で売主は自由に卸値を決められるのですか。」というものがあります。

 

 販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)などの長期的に売買が継続する契約を締結する場合,買主になる販売店としては,卸値がいくらになるのかは,自社の利益に直結する重要な問題です。

 

 そして,卸値については,基本的にメーカーが自社のプライスリストなどにより自由に設定できます。

 

 もちろん,契約の入り口の段階では,価格交渉を行い,販売店もその価格で商品を仕入れて,自社の利益を乗せて上代を決定し販売展開していけば,利益を出せると考えていますので,最終的にはその卸価格を販売店が受け入れたということになるでしょう。

 

 問題は,契約締結後です。英文契約書で卸値を固定的に記載したような場合(このようなことは珍しいと思います。)を除き,メーカーは,卸値を自由に決定することができます。

 

 つまり,英文販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を締結して,仕入販売を行っている途中で,商品の価格を値上げされることがありえ(逆に値下げされても販売店には利益になるだけで問題がない場合がほとんどでしょう。),これが販売店の利益に直結してくるわけです。

 

 ただ,メーカーとしては,事前に卸価格を固定し,変更がないという合意はできないでしょう。原材料の価格や製造コストの増大,経済環境の変化などで,将来値上げをしないといけない場面が高い確率で出てくるからです。

 

 しかしながら,販売代理店からすれば,自由にメーカーが卸価格を値上げできるとなってしまうのであれば,メーカーに有利すぎます。

 

 また,こういうことが法的に許されるかはさておき,極端な話,販売代理店との取引をやめたいとメーカーが考えた場合,不当な値上げをつきつけ,事実上,取引継続を不可能にするなどの措置もとれるということになりかねません。

 

 そこで,販売代理店としては,メーカーの自由な値上げを合理的な範囲で阻止したいと考えるでしょう。

 

 このような要請の下,よくとられる措置としては,メーカーが価格を値上げする場合,数ヶ月前に販売店に通知しなければならないと時間的猶予を設けたり,値上げの理由を告げることを要求し,かつ,その理由は合理的なものでなければならないなどと取り決めたりすることが挙げられます。

 

 後者の場合,合理的理由というのは曖昧ですので,より具体的に,値上げの際に考慮してよい要素を英文契約書に書き入れることもあります。

 

 また,「エスカレーション条項」といって,価格を値上げする場合の計算式を予め英文契約書に記載しておき,値上げの考慮要素や,値上げ幅に恣意性が入らないように規定することもあります。

 

 さらには,最恵国待遇条項・最恵価格条項を挿入し,他の販売代理店より不利な価格を設定してその販売代理店に販売することを禁止することもあります。

 

 例えば,A販売代理店に商品を1つ90円で卸しているのに,B販売代理店には100円で卸すということを,Bとの契約書で禁止するわけです。

 

 これにより,Bも90円で卸してもらうか,Aも100円に値上げしなければならなくなります。

 

 つまり,もし最恵国待遇を約束している販売店に対し値上げを要求するのであれば,全世界の販売店に対しても同じように値上げを求めなければならないということになります。

 

 このような対策を施せば,一応,メーカーが自由に価格を設定し,販売代理店が不当に不利な立場に立たされたり,事実上取引停止に追い込まれるような価格変更はできないということになるでしょう。

 

 販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)にとって,商品の価格は最も重要な契約要素の一つといって良いでしょう。

 

 そのため,この価格が販売代理店にとってあまりにアンフェアに設定されたり,メーカーの自由に変更できるというのでは,長期的なビジネスにとって支障をきたす可能性があります。

 

 メーカーと販売代理店が妥協できる公平な条件で価格変更ができるように十分に交渉する必要があるでしょう。

 

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