英文契約書の相談・質問集113 債権回収は弁護士の主力業務の一つですよね。
英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「債権回収は弁護士の主力業務の一つですよね。」というものがあります。
確かに,交渉や訴訟などを通じて債権の回収を図るのは,弁護士の主力業務の一つであるということはもちろん否定しません。
しかしながら,特に海外取引・国際取引では,債権回収のリスクは国内に比べて格段に高まります。
そもそも,紛争解決手続が,外国の裁判所や仲裁となっていれば,仮に勝てる案件だとしても,現地の弁護士に対応してもらう必要があり,かけなければならない費用と時間は膨大なものになります。
また,仮に裁判などで勝利しても,判決書や仲裁判断はそれだけではただの紙切れですので,相手が任意に払ってくれず外国企業の外国にある財産に対して強制執行をしなければならない場合,さらに費用と時間がかかります。
そして,最終的に回収できないということも十分にありえます。しかし,タイムチャージによって弁護士費用はどんどんとかさんでいくということになりかねません。
弁護士は,動いた分が弁護士費用として払われるので,最終的に回収ができなくとも赤字になることはないでしょう。
しかし,クライアントとしては,債権回収案件は,基本的に,実際に未払いのものが支払われてはじめて意味があります。
したがって,裁判や仲裁で勝利しようが,最終的に回収ができず,弁護士費用ばかりが費用として支払われたとなれば,大損害になってしまいます。
また,金銭的な損失もさることながら,時間の損失も多大です。国内の裁判でさえ,経営者や担当者が裁判に使う時間は膨大になることがあります。
その分,利益を上げる本業ができず,経営にも少なからず影響します。私は,この損失が一番問題だと思っています。時間は最も大切な経営資源ですので,これを大きく損ねるのは非常に問題です。
さらに,お金や時間のみならず,慣れない裁判などに対応することで精神的なストレスも受けることになるでしょう。
これが,相手企業が海外企業だとなれば,かかる時間も国内の程度で済むはずもなく,受けるストレスも何倍にもなってきます。
したがって,弁護士が債権回収を業務の一つにしているからといって,弁護士に頼めば債権回収が可能になるから大丈夫だという発想は極めて危険です。
そういう考えではなく,債権回収を行える弁護士であれば,どのようにすれば債権を回収しなければならない状況を回避できるかについても詳しいはずだという考えを持つことが大切だと思います。
これが,いわゆる予防法務の一場面です。弁護士は,債権回収の必要を生じたなどのトラブルが起きたときに利用できる一方で,そのようなトラブルを扱っているからこそ,トラブルを回避する術も心得ている,これこそが企業が本来利用すべき弁護士の利便性・価値なのだと思います。
債権回収をしなければならない状況をいかに回避するのか,ここにフォーカスする方が,債権回収しなければならない事態が生じた後に対処するのに比べ,費用も圧倒的に安く済みますし,かける時間も圧倒的に短くなり,受ける精神的ストレスも少なくなります。
事前の予防策,防止策は契約書でのリスクヘッジをはじめ,いろいろと存在します。これらの領域で弁護士のサポートを求めた方が,より企業の利益を高めることに繋がると思います。
特に海外との取引においては,債権回収しなければならないとなったときにどうするかを考えるよりも,まずは債権回収の必要性を排除することを徹底的に考えなければなりません。
ビジネス上の利益を安全に確保するためには,何が最善策かを事業のあらゆる段階で常に考えつつ,予防法務的な視点で弁護士からアドバイスを受けるようにすると,安全性が増すかと思います。
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