英文契約書の相談・質問集116 競業避止義務条項が無効になると一切の競業が許されますか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「競業避止義務条項が無効になると一切の競業が許されますか。」というものがあります。

 

 例えば,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を締結する際,特に独占販売店契約(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)を締結する際に,競業避止義務条項(Non-Competition Clause)というものが定められることがあります。

 

 これは,販売店が,独占販売権をもって売主の商品を取り扱うことができるという利益を得る代わりに,売主の商品と競合するような商品は取り扱わないというような約束をする条項のことをいいます。

 

 売主としては,特定の地域では,その販売店以外に別の販売店を指定しないという制約を受けるのですから,ある程度コミットして,売主の商品を売って欲しいという考えがあります。

 

 そのため,このような競業避止義務を販売店に課すことが多いのです。

 

 さらに,売主としては,例えば,販売店が,売主の商品を販売地域で販売展開し,販路を拡大していったという場合に,何らかの方法で売主との販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を終了させて,今度は,別の類似商品を同じ販路を使って売るということをされると損害を被るという場合がありえます。

 

 販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)の終了後に,販売店が広げた販路の顧客に,別の競合品を営業されると,売主が別の販売店や販社を使って自社商品を売り続けようと考えた際の障害になるわけです。

 

 そこで,売主としては,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)の有効期間中はもちろん,契約終了後も競合品を取り扱ってはならないと定めたいと考えることがあります。

 

 ところが,このような取り決めは,各国の独占禁止法・競争法やその他の法律・判例によって,無効となることがあります。

 

 例えば,競合品の販売禁止期間が長期にわたっていたり,競合品の販売禁止区域が広域にわたっていたりすると,販売店の営業権を不当に制限するものとして,裁判などでは無効とされることがあります。


 仮に,「販売店は,本契約終了後も10年間は,イギリスで競合品を販売してはならない。」などと規定していると,禁止期間が長過ぎるなどの理由で,裁判などで争われれば,この競業避止義務条項が無効になる可能性があるということです。

 

 では,契約書に記載された競業避止義務条項が無効と判断された場合,販売店は,自由に競合品を販売できることになるのでしょうか。

 

 せっかく契約書に競業避止義務条項を入れたのに,無効になるような内容になっていたばっかりに,かえって販売店が一切の制約を受けずに自由に競合品を売れるとなれば,売主は困ります。

 

 また,裁判で無効になるかどうかは,ある程度判例などで予測はできても,最終的には裁判で判決が出てみないとわからないことですから,売主としては,契約書の作成段階でどのように競業避止義務条項を定めれば良いのか判断ができなくなってしまうかもしれません。

 

 このような場合に備えて,分離条項(severability)という条項が挿入されることがあります。

 

 これは,前述の例のように,「裁判所などにある条項が無効と判断されてしまった場合でも,準拠法が許す限り有効に解釈されてその限りでその条項も生き残り,他の条項もそのまま有効であることを確認する」というような内容であることが多いです。

 

 つまり,前述の例では,10年間の競業避止義務は長すぎて無効であるが,3年程度であれば有効だと裁判所で判断されるのであれば,競業避止義務条項全体が無効になって,販売店がまったく自由に競合品を売れるというのではなく,3年間は禁止されるというように解釈されるということを意味します。

 

 当該条項が無効となる場合に,全部の効果を失うのか,一部の効果を失うのかというテーマはときに大きな問題です。

 

 したがって,このあたりも英文契約書を作成する際には意識しながら条項作りに励まなければなりません。

 

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