英文契約書の相談・質問集117 買主が商品を引き取ってくれない場合どうすれば良いですか。
英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「買主が商品を引き取ってくれない場合どうすれば良いですか。」というものがあります。
売主が,商品を出荷する準備して,買主に対して引き渡そうとしているのに,買主がいろいろと難癖をつけて,商品の引き渡しに協力をしてくれないという場合があります。
このような場合に,売主としては,何ができるでしょうか。
日本の民法(2018年時点)では,このような場合を,「受領遅滞」と呼んでおり,法定責任説という考えと,債務不履行責任説という考えが存在しています。
簡単にいうと,債務不履行責任説の立場は,買主は売主に協力して商品を引き取る義務を負っていると考え,もし買主の責めに帰すべき事由により,買主が商品を受け取らないのであれば,それは債務不履行となり,売主は,損害賠償請求や契約の解除ができるということになります。
法定責任説では,債務不履行責任ではないので,上記の損害賠償請求や契約の解除までは認められないとしています。
ここで日本の民法の解説をしても仕方がないので,詳細は割愛しますが,要するに,重要なことは,各国の法律によって,買主が商品を受け取らない場合に売主が取れる行動はまちまちであるということです。
買主が自己の都合で商品の受領を拒絶しているときは,売主は商品を引き渡していないことについて債務不履行責任などを問われないということは,一般的に認められるでしょう。
この場合,買主のせいではなく,売主のせいで商品を引き渡せていないのに,売主が損害賠償責任や契約を解除される責任を負うというのは不合理だからです。
ただ,それでも,売主は買主に商品を引き渡す義務を法的に負っている事実に変わりありません。
では,売主は買主が引き取ってくれるまでずっと商品を保管しておかなければならないのでしょうか。
もしそうだとすると,保管費用がかかりますし,食品や季節性商品であれば,すぐに商品価値が落ちてしまいます。
もちろん,この場合買主の都合で売主が商品を保管せざるを得なくなっているわけですから,商品の保管費用などは買主に請求できるという法律が多いかもしれません。
ただ,それ以外の損害賠償請求が可能なのかどうなのかは一般的と言えるような統一的な結論はないと思われます。
法律でどういう手段が認められているかはさておき,現実には,こういう場合,売主としては,早急に売買契約を解除して,商品を他の顧客に転売したいと考えるでしょう。
それには,買主が自己の都合で約束の期日に商品を受け取らないことが,債務不履行を構成し,契約を解除できるとしておくことが安全ということになります。
通常は,買主も納得して商品を注文しているのですから,理由もなく商品の受け取りを拒絶することはないでしょう。
ただ,注文後に転売予定の顧客からキャンセルの申し出が合ったとか,何らかの理由で,すでに発注した商品について,後から受け取りたくないという事情が生じることがあります。
もちろん,売買契約が成立した以上は,売主は商品代金を受け取る権利はあります。
ただ,現場では,代金請求ができるから良いということにはならず,代金の回収が難しかったりして,買主が引き取らない商品をどうするのかということは問題になります。
このような場合に備えて,契約書で買主に受領義務を課し,受領しない場合に売主が何をできるかについて記載しておくことが考えられるでしょう。
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