英文契約書の相談・質問集118 販売店の販売地域が複数あるのですが注意点はありますか。
英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「販売店の販売地域が複数あるのですが注意点はありますか。」というものがあります。
販売店契約書(Distribution/Distributorship Agreement)を締結する際,必ずといってよいほど,Territory(販売地域)を定めます。
販売店が売主の商品を,一定のTerritory(販売地域)内でのみ販売できると定め,その他の地域で販売することはできないとするためです。
販売地域は,独占的販売店契約(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)でも,非独占的販売店契約(Non-Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)でも通常定められます。
そして,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)の中には,このTerritory(販売地域)が複数の国や地域にわたることがあります。
例えば,「販売店はイギリス,フランスおよびドイツについて独占的な販売権を持つ。」などと規定される場合です。
このような場合,通常は,一通の販売店契約書(Distribution/Distributorship Agreement)のTerritory(販売地域)の定義のところに,上記の3カ国を書き込めば良いということになります。
一般的にはこのような規定の方法で問題ないかと思います。
ただ,まれに特殊な法律(強行法規/強行規定として販売店にかなり有利な内容の販売店保護法)などが存在する国が販売地域になっている場合,注意した方が良いかもしれません。
一通の契約書に,販売地域として複数の国が書かれていて,販売店がその特殊な販売店保護の法律が存在する国を所在地としている場合,その国以外で販売地域とされた国に対する販売行為についても,場合によって,販売店保護法の対象とされるという可能性があるためです。
例えば,メーカーが販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を終了させた場合に,販売店が補償金の支払いを受けられるとして,その金額算定の際に,販売店が存在している国における販売利益だけではなく,販売地域とされているその他の国の販売利益なども考慮されるなどということが考えられます。
こうなると,メーカーにとって,補償金の支払いが大ダメージとなる可能性がありますので,このようなことは回避しなければなりません。
こうした問題は,英文契約書の表現や文言での対策は難しいといえますが,少なくとも一緒くたに一本の契約書にせず,販売地域となっている国ごとにばらばらに販売店契約書(Distribution/Distributorship Agreement)を締結した方が無難かもしれません。
こうすることで,あくまで,各国ごとに条件を交渉し,独立して契約されたものだという解釈がなされやすくなって,すべての販売地域に対する売上をまとめて補償金計算の根拠とされにくくなると考えられるからです。
一本の契約書にしてしまうと,すべての販売店が販売地域で採算を見込み,すべての販売地域を一体とした事業であると見られやすくなり,これが,契約終了時の補償金の金額などに影響を与えてしまうおそれがあるかもしれません。
通常は,このようなことまで心配しなくて大丈夫な場合が多いでしょうが,中には,こうしたリスクがある取引も存在するので,事前の現地の法令調査などは怠ってはならないということになります。
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