英文契約書の相談・質問集124 基本契約書と個別契約の裏面約款の内容が矛盾しているのですが。
英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「基本契約書と個別契約の裏面約款の内容が矛盾しているのですが。」というものがあります。
継続的に商品を売買していく場合には,逐一契約書を交わすのは煩雑ですので,通常は,基本売買契約書のような継続的な取引を前提にした基本契約書を作ることになります。
この基本契約書に記載した内容が,当該当事者間が行う取引のすべてに適用されるというように運用すれば,いちいち個別取引の度に契約条件を取り決めたり,書面にサインをしたりしなくとも,個別の売買取引が可能になります。
ところが,売主側で用意している個別契約書の裏に裏面約款が印字されている場合があり,その内容と基本契約書の内容が矛盾する場合,どちらの内容が適用されるのかということが問題になることがあります。
また,注文書と注文請書を交わす場合にも,特記事項の欄に,基本契約書と矛盾する内容を書き入れて,発注・受注をすることもあります。
この場合にも,基本契約書の内容と,発注書と受注書で合意した内容のどちらが優先するのかが問題になります。
この場合,基本契約書にどういう定め方をしたかによって結論が変わってきます。最もわかりやすいパターンは,上記のことを予め想定して,個別契約と基本契約書の内容が矛盾した場合,どちらの内容が優先するかを予め基本契約書に記載してある場合です。
この場合は,基本契約書に記載された優先順位によって内容が決まるということで問題がありません。
個別契約が優先する(prevail)と記載してあれば個別契約が優先しますし,逆に基本契約が優先するとされていれば基本契約が優先します。
基本契約書に書いていない場合は,例えば,Amendment条項やEntire Agreement条項の記載などによって結論が変わってくることがあります。
Amendment条項やEntire Agreement条項で,基本契約書の内容を変更したい場合は,基本契約書にサインした代表者がサインする書面によってのみ変更が可能であると書いてあることがあります。
この場合,次のように考えられると思います。ます,個別契約書や発注書・受注書は,担当者がサインするなどして,いちいち代表者がサインしていないことの方が通常でしょう。
そうすると,個別契約書の裏面約款や注文書・注文請書に記載された内容が基本契約書と矛盾していても,基本契約書の内容が変更されたことにはならず,基本契約書の内容が優先するということになると思われます。
他方,このようなAmendment条項やEntire Agreement条項もない場合は,より問題は難しくなります。
個別契約書できちんと契約は成立していますし,基本契約書よりも時間的には後に個別契約書を交わしています。
そうすると,当事者の合理的な意思としては,その取引については,後で合意した個別契約書の内容が優先されるということになるという解釈も成り立つと思います。
最初に約束した内容と異なる内容を後から合意しているので,新しい当事者の意思は後者になると考えるのが合理的だからです。
ただ,反対に,あくまで正式に代表者がサインした基本契約書があり,そこには,基本契約書の条項がすべての個別契約書に適用されると書いてあるのだから,担当者が交わした個別契約書の内容は基本契約書の内容と矛盾する限りで排斥されるという解釈もありうると思います。
このようにどちらも理論上成り立ちうるということになってしまい,契約関係が不安定になってしまいます。
そのため,このようなことにならないよう,基本契約書を締結する段階で,個別契約の内容と矛盾した場合どちらの内容が優先するのかを記載するのが基本です。
そうでなくとも,せめて個別契約を締結する際に,権限ある者がきちんと基本契約書の内容を修正して個別契約を交わすという意図を明確にして契約書を交わすなどの対策をとっておいた方が良いと思います。
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